ネットメディアでは、使う言葉が違ってくる

伝え方を身につけたら、日本企業は強くなる<br />【サイバーエージェント藤田晋×佐々木圭一】(前編)

藤田 特に日本語は伝えるのが難しい、ということが、佐々木さんの『伝え方が9割』に書かれていますね。

佐々木 はい。日本語はすごく難しい言葉なんです。例えば、「味言葉」というのは、日本語にはいっぱいあるんですが、「甘い」「辛い」「塩辛い」といった当たり前の言葉以外にも、例えば白身魚を食べたときにポジティブな意味で「淡い味」と言い表したりしますよね。英語だと、それをあらわす言葉はないんです。日本語は、英語の3〜4倍の「味言葉」があるんです。
 固有名詞や単語も、日本語はたくさんある。日本語だけの辞書と英語だけの辞書では、日本語のほうが分厚かったりします。単語の数がすごく多くて、日本語は言葉に相当詳しい人じゃないと自在には操れない言葉なんですよね。

藤田 日本語がかなりわかっている人でないと、ということですね。

佐々木 ただ、何を目指すのか、というのがポイントになると思うんです。それこそ、日本語の機微まで細やかに伝えたいのか、それとも欧米的にシンプルにポイントだけを伝えたいのかで、伝え方は変わってくる。
 小説や詩、作詞では、単語数を相当たくさん使うので、それこそ言葉をより多く知っているほうが、よりいいものになるかもしれない。それに対して、ネット系のメディアでは、なるべく簡単に、例えば小学生や中学生でも理解できる簡単なもののほうが適していますよね。

藤田 言葉の使い方と媒体の組み合わせは、たしかにそうですね。ポスターに出てくる言葉、ネットでブログに書いている言葉、ツイッターで吐き出している言葉は、違う気がするんです。同じグッとくる言葉でも、人に言葉で伝えるときと、媒体に載せるときとでは、伝わり方が違う。

佐々木 書き言葉と話し言葉は、違いますね。あと、媒体によっても書き分ける必要があります。ネットはなるべく短く、ですよね。ヤフーのトピックスの見出しは、だいたい13.5文字くらいだと言われていますが、この短さが今や日本基準になってきている気がします。どれだけ短い言葉で、内容を伝えられるかが問われている。
 ただ、本は13.5文字では言い表せられませんよね。「きちんと読む」という態度で人は本を読むので、そういうつもりで書かないといけない。

藤田 実は最初、『起業家』はブログを本にするつもりでスタートしたんです。でも、何か違うな、と思い始めて。結局、全然うまくいかなくて、書き下ろしにしました。

佐々木 ポイントは、読む人のことをどう想像するか、だと思うんです。ヤフーを見るときには「ヤフーでニュースを見る」という態度で人は見ていますから、そのつもりのものを用意しないといけない。
 一方で、本を書くときは、「本を読む」という態度でページを開いている人に向けて書かないといけないですよね。