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吉田恒のデータが語る為替の法則

日米政府が秘密合意!?
ドル/円の「影の管理ゾーン」とは?

吉田 恒
【第21回】 2009年3月11日
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 9日発表された日本の1月経常収支が、13年ぶりの赤字に転落して、一般報道でも大きく取り上げられています。これは、中長期的な円の価値を考える上ではとても重要なことであり、こういうこともあるので、本来、70円を大きく越えるような円高は難しいと私は思います。

 さて、そう考える理由を説明する上で、今回は購買力平価(PPP)(※)という考え方を使いたいと思います。

 購買力平価というのは、為替の適正水準に関する考え方の1つですが、実はこれはドル/円にとって「影の管理ゾーン」のようなものに結果としてなってきたのです。

 下の図は、ドル/円相場(青のライン)の推移に、2つの購買力平価を重ねたものです。2つのうちの1つは日米の輸出物価で計算した購買力平価(緑色のライン)、もう1つは日米の生産者物価(卸売物価)で計算した購買力平価(ピンク色のライン)です。

(編集部注:「購買力平価」(PPP=Purchasing Power Parity)とは、その通貨でどれだけのモノが買えるかということを基準として導き出された理論的な為替レートのこと。その際、どんな“モノ”が使われるかによって、購買力平価にはいくつかの種類がある。マクドナルドのビッグマックを使って算出された“ビッグマック指数”も購買力平価の一種)

ドル/円相場と2つの購買力平価(PPP)

 これをみると、ドル/円相場は、1980年代半ば以降、基本的にこの2つの購買力平価のレンジ内で推移してきたことがわかると思います。私が購買力平価を「影の管理ゾーン」と紹介したのは、この結果から納得してもらえるのではないでしょうか。

日米政府間でドル/円レートの
「秘密合意」があった!?

 もしかしたら、日米の政府間には、ドル/円相場の上限、下限に関する「秘密合意」があり、それに基づいて為替を管理しているのではないか。そして、そんな上下限の「管理目標」は、実はこの2つの購買力平価とほぼ一致しているのではないか――。

 さて、そんな具合に、想像をたくましくするということもあり得ると思いますが、それはともかくとして、2つの購買力平価が過去20年間、ドル/円相場のほぼ上下限になってきたことは事実です。その状況がこの先も続くなら、ドル/円相場はこの2つの購買力平価のレンジを大きく抜けないといった見通しになるでしょう。

 実は、1月末現在で、輸出物価で計算した購買力平価は70円程度、一方、生産者物価で計算した購買力平価は110円程度です。ということは、当面70~110円が「影の管理ゾーン」のようになる可能性があるでしょう。

 グラフを見るとわかるように、購買力平価も数年スパンでは微妙に変化するものです。たとえば、この2つの購買力平価レンジは、2006年頃には90~120円程度でしたが、上述のように最近では70~110円程度に、ドル安・円高へシフトしてきたわけです。

 ただ、それにしても、この「影の管理ゾーン」からすると、2007年にかけて120円を越えた円安は行き過ぎだったということになります。そしてこの「影の管理ゾーン」からすると、最初に述べたように、この先円高が70円を大きく越えていくのも微妙ではないかという結論になるでしょう。

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吉田 恒 

立教大学文学部卒業後、自由経済社(現・T&Cフィナンシャルリサーチ)に入社。財務省、日銀のほかワシントン、ニューヨークなど内外にわたり幅広く取材活動を展開。同社代表取締役社長、T&Cホールディングス取締役歴任。緻密なデータ分析に基づき、2007年8月のサブプライムショックによる急激な円高など、何度も大相場を的中させている。2011年7月から、米国を本拠とするグローバル投資のリサーチャーズ・チーム、「マーケット エディターズ」の日本代表に就任。


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