知識偏重の時代はもう終わり。
これからは創造の時代に。

為末 僕個人の見解ですが、知識を教えるという学校の役割は、これから小さくなっていくような気がします。いまでも本気で受験する子どもは塾に通って、知識を身につけますよね。それについてはどう思われますか。

松田 実は受験のために塾に通っているのは、都会の子どもたちが中心です。私立に通っているのも3%だけで、97%の子どもたちは公教育に頼っています。そういう実態を考えると、今後も学校教育が知識の領域を担うという状況は大きく変わらないと思います。

為末 なるほど。ただ、将来IT化が進んで、頭の中がグーグルと直接アクセスできるような時代がやってくるかもしれないですよね。そうなると、「知識を持っている」こと自体、あまり価値はなくなるのかなと。

松田 そうですね。たしかに知識そのものより、それをどう使って新しいものを創造するのかということが学校教育の中心になる可能性はあると思います。

大人たちが「夢」を語れば
子どもたちの未来も広がる

為末 僕は、コミュニケーションが今後の教育の大きなテーマになると考えています。新しいものをつくるときも、みんなでわいわいやったほうが、思ってもみなかったようなものが生れそうじゃないですか。

松田 同感です。お互いに考えを伝えて理解しあう力は絶対に必要になる。

為末 僕はその力を、スポーツを通して身につけてもらいたいと考えて、自分の教室でもいろいろ試しています。

 たとえば球技でパスを出すときは、チームで意思の疎通ができていないとつながりませんよね。では、言葉で伝えればいいのかというと、そう単純な話でもない。言葉で伝えた途端、敵チームにも聞こえてしまうからです。そこでだからアイコンタクトで伝えたり、事前にパスするケースを話し合っておくといった工夫が必要になります。

 スポーツには、このようにいろんなコミュニケーションが詰まっています。これを利用しない手はないかと。

松田 おもしろいですね!日本の学校教育はまだ旧態依然としていて凝り固まっている部分があるのですが、学校の外では、為末さんの取り組みのように興味深い事例が出てきています。学校の中と外でそのあたりの交流が生まれれば、学校はもっとおもしろくなると思います。

為末 もう一つ、自分が先生をやるようになって気づいたことがあります。それは子どもたちより、僕が学んでいることのほうが多いということ。そうした学びを大人同士で共有し合うことができたら、先生たちもやる気が出るんじゃないですかね。

松田 僕たちの活動の目的の一つも、そこにあります。まず先生が子どもたちのロールモデルになって夢を語り、挑戦しなくてはいけないのですが、いまはそういったことを考える先生が学校内で孤立しやすい構造になっています。

 だから、自分が成長しようと頑張っている先生たちが、学んだことをシェアして支え合うような仕組みが必要。そうした場が増えれば、日本の教育も変わっていくかと。

為末 それは日本全体にいえるかもしれないですね。子どもたちに「夢を持て」というわりに、ロールモデルとなるべき大人たちが暗い顔をしている。本当は先生だけじゃなく、すべての大人が夢を語ったほうがいい。それが自然にできる社会ができるといいですね。

(取材・文 村上 敬)


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