DJポリスの使った技術は、
講演のつかみにも使える

 これは、もう一歩進んだ例です。最近『あたらしい働き方』を上梓した本田直之さん。本田さんの講演に参加したときに、その心の掴み方に衝撃をうけました。

 どの講演であっても、聴衆は意欲的な人とそうでもない人がいるもの。特に後ろのほうに座っていて、なんとなく参加した人たちは眠っていたりもします。

 講演がはじまったとき、本田さんはいきなり矢継ぎ早に質問をはじめました。

「この中で、自分が面倒くさがりやと思う人?」
「この中で、満員電車に乗るのがキライな人?」
「この中で、決まった机でずっと仕事するのがキライな人?」

 これらの質問に、そこにいる会場ほぼすべての人たちがざわめきながら手をあげました。それらの質問は、ほぼ全員が手をあげたくなるような質問でした。そして本田さんも言いました。

「私もいっしょです」

 各分野で大成功しているあの本田さんが、自分たちといっしょの考えということに、その会場は軽い興奮状態になりました。もちろんそこからの本田さんの講演内容が素晴らしかったこともあります。ですが、はじめに受講者と本田さんはいっしょだということを伝えたことで、ただの一方的な講演ではなく、聴衆と本田さんがその場を、その講演をいっしょにつくっている状況となったのです。

 講演は、大盛況のまま、あっという間の90分が終了しました。私の体感でいうと20分ほどで終わってしまったかのような時間の流れでした。

 もし、ただ「みなさん、私の話をきいてください」というカタチで講義をしていたらきっと寝る人も出てきたでしょう。ですが、本田さんの「みなさん、私といっしょに授業をつくりましょう」という暗黙のメッセージがあったことで全員の心が動いたのでした。