女性が働きやすい職場とは

経沢 今後、各企業が女性を活かすということに積極的になれば、新しいノウハウもできてくると思うのでいい流れだなと思いますが、現段階では女性が働きやすい環境はというと、どうしても育児休業がちゃんと取得できるとか、早く帰れるとか、制度的な意味合いでとられることが多いですよね。もちろん大企業ならばそれは可能かもしれませんが、そうでないと十分に補いきれないところがあります。

 私が以前働いていたジョンソン・エンド・ジョンソンの多くのグループ会社では、社内に託児所を設けて働く女性のサポートを行っていました。会社として女性が働きやすいようなシステムづくり、制度の充実というのは大事ですが、それだけではダメでしょう。

経沢 私がすごく思うのは、女性はなにも9時~5時で帰りたいとか、仕事を早めに上がらせてもらえたら嬉しいというわけではなく、女性もちゃんと評価されたいんだと思うんです。自分の仕事をちゃんと評価されたい。

 女性であることそのものがハンディキャップではなくて、女性でもスキルがあって人間力があれば会社の財産だと。“人財”として評価されることが大前提ですよね。

経沢 私も3回出産しているので、キャリアの中断とまではいいませんが、物理的に叶わぬ思いの時期というのがありました。女性ならばそうした仕方ない時期があるということで、会社にそのリスクを先読みされ、躊躇されてしまいます。リスクを恐れずチャンスを与えてくれる会社だと、女性が働きやすいように思えます。

 たとえば、結婚は興味がない、プロフェッショナルで自分のキャリアを磨きたいという女性もいれば、仕事は好きだけれどワークライフバランスを保って、家庭と仕事を両立したいという女性もいる。帰れるものならば少しでも早く帰りたい女性もいる。人の価値観はさまざまだから、その人の価値観を体現できる選択肢が増えていくのが理想でしょう。

 でもいちばん重要なのはトップのコミットメントですよね。技術や設備といったモノ以上に経営資源は人間で、そこに男も女も関係ないんだと思えるかどうか。これはトップの哲学が問われるところです。