資源・一次産品ブームによってもたらされている需要の拡大にアフリカの国内産業が応えられていないのは、広範な小規模農家の生産基盤がぜい弱なこと、国内の経済活動をつなぐ道路など運輸インフラが未整備なこと、そしてそのために都市生活者の暮らしも困難で不安定なこと、産業を担う人材が乏しいことなどの基本的な課題が、独立以来のさまざまな努力にもかかわらず、克服されていないことに原因がある。さらにインフォーマルな小規模企業の活力が注目され、その育成が長年叫ばれながら、効果的な対応はとられてこなかった。その背後には、これらの課題に役割を果たすべき政府の能力が依然として弱いことがある。

 今後、アフリカが自立的で持続的な経済発展を遂げていくためには、政府が援助に頼らず、国内に潤沢で安定した税源を確保し、上記の課題克服のために効果的に支出配分していく行財政能力を身に付けることが欠かせない。資源や一次産品の収入が増加している今をおいて、その努力を加速させる好機はない。

 1990年代から貧困削減の理念の下に続けられてきた、教育・保健の向上の努力は、質の高い人材として経済活動へ参加する機会を、大多数の人々にもたらすために、倦むことなく続けられなければならない。人々を貧困から解放することは、外部のブームに左右されない堅実な消費需要を作り出すことと同じである。経済成長が貧困削減をもたらすだけではなく、貧困削減があってこそ、経済成長も将来にわたって持続させることができる。

成熟したスマートな大国として
日本は何をなすべきか

 TICAD Vでは、今後のアフリカ支援に向けて、官民連携と、貿易-投資-援助の三位一体のアプローチをとることが提唱された。援助によってインフラや人材が整い、日本の企業の直接投資が促され、それに伴って貿易も飛躍的に増加したという、東南アジアでの成功体験が念頭にある。だが、過去の東南アジアと現在のアフリカの状況には大きな違いがあり、官民の連携、また「三位一体」の内容も変わって来ざるを得ない。

 1980年代からしばらく、日本は東南アジア諸国にとって貿易、投資、援助のいずれをとっても圧倒的に影響力の大きなパートナーであった。だが、現在のアフリカにおいて日本はせいぜい重要なパートナーの一員であるに過ぎない。肝心なことは、欧米や中国など新興諸国とアフリカの関係をよく見極め、日本ならではの位置取りと役割を見出していくことだろう。

 そのなかで日本とアフリカの利益になるのであれば、中国など第三国との連携もためらうべきではない。むしろ就任当初の安倍晋三首相自身の指摘のように、争点以外に協力交流できる分野を増やすことが、お互いのためである。いたずらに中国との競争をあおるのは、アフリカには関係のない東アジアの外交関係を持ち込む、視野の狭い発想だと言わなければならない。

 また、中国の先行に焦って、援助の本筋を踏み外すのは論外であろう。民間企業の活動においては、政府の関与は原則として投資の保証、情報の積極的提供や研究開発の側面支援などにとどめるべきである。大震災後、予算逼迫のなか日本の企業の利益になることを説明しなければ援助案件が採択されにくくなった、と聞く。こうした官民もたれ合いの構図をアフリカでも続けるのであれば、輸入品の洪水によって熾烈さを増しつつあるアフリカの競争的環境のなかでは勝ち抜くことは到底できない。