上司を観察すれば、理想の部下は見えてくる

上司は、自分が上司にやっていることを<br />部下にも同じように求める<br />【元スターバックスコーヒージャパンCEO・岩田松雄×コピーライター・佐々木圭一】(後編)佐々木圭一(ささき・けいいち)
コピーライター/作詞家/上智大学非常勤講師 上智大学大学院を卒業後、97年広告会社に入社。後に伝説のクリエーター、リー・クロウのもと米国で2年間インターナショナルな仕事に従事。日本人初、米国の広告賞One Show Designでゴールド賞を獲得(Mr.Children)。アジア初、6ヵ国歌姫プロジェクト(アジエンス)。カンヌ国際クリエイティブアワードでシルバー賞他計3つ獲得、AdFestでゴールド賞2つ獲得、など国内外51のアワードを獲得。郷ひろみ・Chemistryの作詞家としてアルバム・オリコン1位を2度獲得。Photo by Tomohito Ishigo

岩田 リーダー向けの本の続編として、『「君にまかせたい」と言われる部下になる51の考え方』を出したんですが、佐々木さんも上司をお持ちの部下でもあると思います。どんなふうに感じましたか。一般の仕事と違ってクリエイターですから、やっぱり、それほど上司の顔色は見なくてもいいんでしょうか。

佐々木 なるほど、と思ったものはたくさんありましたが、一番なるほどと思ったのは、上司がそのまた上司にやっていることを、部下に求める、ということですね。

岩田 それは、僕も発見だったんです。上司が、その上の上司にどう接しているかによって、部下に何を求めているかはよくわかるんですよ。上にゴマする上司は、部下にもゴマをすらせるわけですね。基本的に、自分がカンフォタブルなことをやるので、それを求める。逆にいえば、上司にどう接しているかを見れば、理想の部下も見えてくるんです。
お客様をマーケティングするように、上司をマーケティングするべきなんです。

佐々木 ご自身が、部下として大変な苦労をなさったことも書かれていますね。

岩田 ノイローゼになったりしました。だから、本当のところを言うと、自分がいい部下だったのかというと、クエスチョンはいっぱいつくんですよね。おそらく、使いにくい部下だったと思います。
 だから、自分で言うのは変ですが、それなりの器の上司だったら、僕はうまく使いこなせたんだと思います。でも、そうじゃない上司は、まったく使いこなせなかった。それこそ、呼び出されて、つまらないことを言われるたびに、やる気を失ったりしていましたからね。だから、扱いにくい部下だったと思います。

佐々木 でも、それでも経営トップにまで登り詰められるわけですから。実は僕も扱いにくい部下だと思っています。会社で偉くなるために生きてきたわけではまったくないし、上に気に入られようとも思っていない。やっぱり扱いにくい部下ですよね。

岩田 理系の人って、いい部下になりがちな人、多いんですけどね。真面目な人が多いので。でも、佐々木さんを見ていると、正しくコピーライターという感じですよね。もともと理系っぽくなかったんですか。

佐々木 いや、頑固者なので、基本の部分は実は変わっていないんです。髪型とかは、とてもエンジニアとは思えないかもしれませんけど(笑)。でも、20歳くらいのときに思っていたことと今の自分は変わらないです。
 岩田さんの本の中に、「火花が散る瞬間」というフレーズが出てきますけど、そういうのを見るとドキドキしちゃいますよね。理系ですから、モノが作られていく現場って、やっぱり僕にはすばらしい場所なんです。あれは、震えるような話でした。
 モノ作りの現場は、ある意味、自分が行けなかった場所。もう一人の自分がいたら、もしかしたら行っていたかもしれない場所ですから。

岩田 血が騒ぐわけですね。