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6月27日 18時0分
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リスクとの付き合い方 PART1 - 広木隆「ストラテジーレポート」

リスクと不確実性

アメリカの経済学者フランク・ナイトは、確率によって予測できる「リスク」と、確率的事象ではない「不確実性」とを明確に区別した。簡単にいうと、計算やデータによってある程度予想がつくことの不確かさを「リスク」と呼び、計算しても答えの出ないこと、まったくの当てずっぽうで選ぶしかないような問題を本当の「不確実性」としたのである。

イーヴァル・エクランドも『偶然とは何か - 北欧神話で読む現代数学理論全6章』の中で同様のことを述べている。「確率論的なリスク」と「無知のリスク」を区別しようと。確率論的なリスクとは、ふつうの確率計算から出てくるリスク、無知のリスクとは、これから起こることについての情報の欠如からくるリスクである。

エクランドによれば、人は無知のリスクよりも、確率論的なリスクのほうを抵抗なく受け入れる。しかし、実際にはこれらのリスクは渾然一体となっていることが多いという。そこが重要なところだ。ナイトの定義による「リスク」と「不確実性」、エクランドがいう「確率論的なリスク」と「無知のリスク」、それらは本来は別物なのだが、実際に我々が捉え得る感覚では、それらは渾然一体となっているのである。

先般のFOMC後、バーナンキ議長が量的緩和の縮小に言及して以来、世界の金融マーケットは動揺の度合いが増している。ドルに回帰する流れが強まり、新興国市場からの資金流出が鮮明となっている。そこに中国の銀行間市場での資金逼迫懸念、いわゆるシャドーバンキング規制による金融市場の混乱という問題が重なって、グローバルにリスク回避の動きが加速している。

ここでは「リスク」と「不確実性」がごっちゃになっている。FRBの金融緩和の縮小 - それは極めて計画的なイベントであり、その結果マーケットが辿るパス(道筋、展開)は一定の範囲内に収まるだろう。どのパスを辿るかは、無論、現時点ではわからないものの、ある意味、確率論の範疇である。一方、中国の金融市場の混乱は「不確実性」の部類である。これから起こることについての情報の欠如からくるリスク、無知のリスクだ。情報や分析は、いろいろ届く。しかし、わからないことのほうが圧倒的に多い。我々が - 少なくとも僕が - 入手可能な情報は、すべて第三者からの「伝聞」 - 言ってみれば「聞きかじり」に過ぎない。この問題について僕は知見を持ち得ない。

では知見を持ち得ないと投資はできないか、と言えば、そんなことはない。完全に無知の状態から純粋に確率論的な状況まで、不確実さのあらゆる段階を連続的に目盛りに置くことができる。完全に無知のリスクと確率論的なリスクを合算して、統合されたリスク度合いをイメージすればよい。重要なことは、この2つのリスクを渾然一体、ごちゃ混ぜにしないで、区別したうえでトータルな不確実の度合いを自分で認識することである。

リスクオフなのか?

と、ここまでは極めて観念的、抽象的な話であった。レポートのイントロダクション、「前置き」として読んでもらえばよいと思う。「この2つのリスクを渾然一体、ごちゃ混ぜにしないで、区別したうえでトータルな不確実の度合いを自分で認識すること」とは言うものの、具体的にどうするんだ?と聞かれたら答えようがない。では、具体的じゃないからダメ、抽象的なものはわかりにくいからダメかというと、そうではないと僕は思う。ああ、どんどん本論から遠ざかっていくようだ。このままではいつまでたってもマーケットの議論に辿りつかないので、これ以上、抽象的な話をするのはやめにする。どうして具体的な話より抽象的な話のほうが大切か、という点については、森博嗣『人間はいろいろな問題についてどう考えていけば良いのか』(新潮新書)を一読されることを勧める。


ところで、バーナンキ・ショックにチャイナ・リスクが重なって、「グローバルにリスク回避の動きが加速」と上述した。しかし、果たしてこれは「リスクオフ」なのか。確かに新興国市場の通貨や株式市場は急落している(グラフ1)。しかし、これまでさんざん金融市場の足を引っ張ってきた欧州債務危機を象徴する南欧諸国の国債利回りは、それほど上昇していない(グラフ2)。「恐怖指数」として知られるシカゴのボラティリティ・インデックス(VIX指数)も一時年初来高値をつけたとは言え、水準感としては全然低いままだ(グラフ3)。そして、過去いわゆるリスクオフの局面では代表的な安全資産として逃避資金の受け皿となってきた金、そして米国債が売られている(グラフ4)。







こうした株、債券、商品などほぼすべての資産が売られる状況について「グレート・リクィデーション」(リクィデーションとは流動化とか換金とかの意味)というような言葉まで、囁かれ始めている。

しかし、もう一度、問う。これは「リスクオフ」なのか。そうではないだろう。株、債券、商品などほぼすべての資産が売られる状況といったが、そのなかにあってまったく売られていないマーケットがある。意外と思われるかもしれないが、原油市場である。グラフ5はニューヨーク・マーカンタイル取引所(NYMEX)のWTI(ウエスト・テキサス・インターミディエート)原油先物のチャートだが、ご覧の通りまったく売られてない。ずっとレンジ相場が続いている。25日、75日、200日の移動平均線が収斂しているのが分かるだろう。



一時は荒い値動きの象徴ともされたコモディティの代表選手、WTIの価格がびたっと横ばいで安定し、恐怖指数と呼ばれるVIX指数は17という水準。200日移動平均が15だから、ほとんど過去1年間の平均的なレベルにある。そして、昨日のNYダウ平均の終値は14,910ドル。史上最高値が15,409ドルだから最高値から500ドル下の水準。500ドル下げたとは言え、率にすればわずか3%下げただけである。つまり、米国株はほぼ史上最高値圏にある。これのどこが「リスクオフ」なのだろう。



同じ期間をとってボラティリティ指数を比較しよう。株式のボラティリティ指数であるVIX指数(グラフ6)と米国債のボラティリティ指数であるMOVE指数(Merrill Lynch Option Volatility Estimate Move Index、グラフ7)、それぞれ過去1年の推移である。株は動揺していない。動揺しているのは債券である。



債券については国債だけでなく社債からハイ・イールド債まで軒並み急落している。顕著に売られているのは、これまで資金偏重とも言えるほど資金が流れ込んでいた債券市場である。今起きていることは、リスクオフではなく、無論、「グレート・リクィデーション」でもなく、債券から株式に資金がシフトする、いわゆる「グレート・ローテーション」が本格的に起きる前の、ちょっとした踊り場に過ぎないと考える。


(チーフ・ストラテジスト 広木 隆)

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