4月3日、プロ野球が開幕した。

 今年の開幕で注目されたのは10日ほど前に多くの人を感動させたWBCの余熱が残っているかどうかだった。

 残っていれば観客動員や視聴率に反映されるはずだ。日本のWBC連覇をきっかけに、野球人気復活の兆しが出てきたことになる。が、余熱が感じられなければ、あのWBCの盛り上がりはイチローや松坂を含むメジャーリーガーが世界連覇に挑む構図があったからこそ生じたものであり、野球人気の動向とは関係なかったことになる。

 結果はどうだったか。日本ハム-楽天戦はダルビッシュと岩隈のWBC主軸対決で注目を集めるなど盛り上がりを見せた。その試合が行なわれた札幌ドームをはじめ開幕戦の6試合はいずれも満員に近い観客動員を記録。開幕カード3日間をトータルすると62万人ものファンが球場に集まり、なかなかの熱気だった。

 とはいえ日本テレビが試合開始から中継した巨人―広島戦の平均視聴率は13.3%(関東地区)。昨年(巨人―ヤクルト戦)の11%よりは良かったものの、軒並み30%を超えたWBCの日本戦と比べると、寂しい数字だ。WBCは普段、野球中継を見ない人も注目したが、プロ野球のペナントレースは、少なくなりつつある野球ファンが見るものに戻ってしまったようだ。

「絶対に見逃せない試合」
に共通する3要素とは?

 この現象を見て、ふと考えた。WBCのように、「誰もが“絶対に見逃せない”と思うスポーツの試合とはどういうものか」ということについてだ。つまり高視聴率を取り、翌日はスポーツ紙だけでなく一般紙も一面に記事を載せ、友人や同僚などと「昨日の○○戦、見た?」、「○○選手、凄かったね」などと語り合うような試合である。

 それらを思い返していくと、“3つの要素”があることに気づいた。

 1つ目は「スーパースター」の存在だ。

 日本でいえば長嶋茂雄。世界に目を転じれば、野球ならベーブ・ルース、サッカーならペレ、マラドーナ、ゴルフならタイガー・ウッズといった選手。人知を超えた才能と存在感を持ち、そのプレーを見るだけで人々を幸せな気分にさせる選手がいるかどうかである。

 2つ目は自国、つまり「日本の選手」が世界を相手に戦い、勝った時である。

 オリンピックがそうだ。女子マラソンの高橋尚子、野口みずき、競泳の北島康介など有力選手が期待通りの活躍を見せると、その視聴率は高い数字を記録するし語り草にもなる。