公私ともに話ができる友人は職場にいる?
ある事業所では「全くいない人」が半数に

 皆さんには、仕事上でもプライベートでも話ができる友人はどれくらいいるだろうか。

 昔、筆者がある企業でアンケートを取ったところ、400人以上の事業所の中で、「誰もいない」という回答が5割近くに上った。「1人」がほぼ3割。実に8割近くの人々が、「職場に1人友人がいるかいないか」という状態であった。

 一方で、「仕事以外の友人が10人以上いる」と答えた人もちらほらいた。

 こういった仕事内外での人間関係は、その後の人生に大きな影響を及ぼすことも珍しくない。

 それを学術的に証明してみせた有名な研究がある。スタンフォード大学のマーク・グラノヴェッターが1973年に発表した『弱い紐帯(ちゅうたい)の強さ』(The strength of weak ties)という論文である。すでに知っている読者も多いだろう。

 彼は、アメリカのアッパーミドルクラスの白人男性を対象に、彼らの人間関係とその効用について調査を行った。特に人間関係をネットワークとみなし、その関係を「強い紐帯」と「弱い紐帯」に分けた。

「強い紐帯」とは家族や親族、共同で事業を立ち上げたビジネスパートナーなど、強固で緊密な関係性を持つ「つながり」である。「弱い紐帯」とは、それほど親しくなくともビジネス上話をする、ときどき遊ぶ友人など、強固でも緊密でもない関係性の「つながり」だ。

 常識的に考えれば、関係は濃密であるほど、色々な意味で「よい」と思われる。困ったときや大変なときに、まず助けてくれるのは強いつながりのある相手だ。また、強固な絆で結ばれたグループは、何か目的を持って皆で協力しあうには、力を発揮する。