6月に政府の成長戦略が発表された。その内容は、「日本再興戦略-JAPAN is BACK-」という100ページ近くの資料につづられている。

 その内容は多岐にわたり、農業、女性活用、特区など消化不良に陥るほど盛りだくさんである。しかし、ビジネスマンの肌感覚に照らして、経済成長を促そうというときに、「農業や医療を成長分野に」というのはちょっと縁遠い話ではないかと首を傾げてしまう。

 しかし、不満を述べるのは簡単であるが、何が望ましいのかという対案を出すことは簡単ではない。読者の皆さんは、何かよいアイデアをお持ちだろうか。

 本稿では、順序を追って、どんな成長戦略であれば、より望ましいのかを考えてみることにする。

目指すは企業の収益体質の強化

 政府の目標設定には、名目3%成長を継続することで、「10年後の1人当たり名目国民総所得(名目GNI)を150万円以上増やす」という方針がある。

 ここ1、2年先でさえ賃金上昇の展望が立ちにくいのに、10年後の所得水準を語るのは飛躍を感じる。筆者は、賃上げできない理由の1つには、企業の収益水準がまだ低く、賃金水準を引き上げることに企業経営者が慎重であるという背景があると考える。

 賃上げできるようにするには、企業経営者が自信を取り戻すために、企業の競争力を向上させる必要がある。だから、成長戦略では、競争力強化策に取り組まなくてはいけない。