内閣府は7月16日、2008年度の経済成長率見通しを実質ベース(物価変動を除く)で前年度比1.3%、名目ベースで同0.3%に下方修正した。今年1月に閣議決定した政府経済見通しは実質ベース2.0%、名目ベース2.1%の成長を見込んでいたが、その後の経済環境の変化などにより今回の大幅修正となった。

 下方修正の主な要因は、昨夏のサブプライム問題表面化以降、米国経済の減速によって、わが国の輸出に陰りが出始めていること、原油や一部穀物の価格が高騰していることだ。

 今回の下方修正は、短期的に見れば、それほど大きな変化とは言えないかもしれない。しかし、今後も世界経済の減速が続くと見られ、わが国を巡る国内外の経済環境は一段と厳しさを増すことになるだろう。その中で、これから日本の社会がどのように変化していくのか、冷静に見つめることがより重要になるはずだ。

景気回復の原動力だった
「米国向け輸出」に陰りが

 日本経済は、1990年代のバブル崩壊からの長期低迷期を乗り越えて、2002年2月から景気回復軌道に復帰した。すでに景気拡張期は、今まで最長だった“いざなぎ景気”を超えた。

 ただし、今回の景気局面と“いざなぎ景気”とは、大きく違う点が2つある。

 1つは成長率が異なることだ。“いざなぎ景気”のときは、日本が本格的な工業化に向かう過程であったため、ちょうど現在の中国のような2ケタ成長を続けることができた。ところが、現在の日本経済はすでに安定成長に入っており、今回の平均成長率はせいぜい2%弱というところだろう。我々が肌で感じる景況感が、あまり好転しているとは思えない大きな理由はそこにある。

 もう1つ忘れてならないことは、今回の景気回復が輸出主導である点だ。日本では、現在世界最速のスピードで少子高齢化が進んでおり、すでに人口もピークを超えたと言われている。これでは、GDPの約6割を占める個人消費は伸び難い。また、財政状況を考えると、財政投資で経済を押し上げることも難しい。勢い、「外部的要因=輸出」に頼らざるを得なかった。

 事実、2002年の年初以降、米国の消費ブームと中国の投資ブームに支えられて、日本の輸出は大きく拡大した。それが、今回の景気回復の原動力だった。人口が減少している日本経済が成長を実現して来られたのは、輸出拡大のお陰と言っても過言ではないだろう。