ボラティリティの大きな選挙制度

 選挙期間が終わったので、安心して選挙に関連する話ができる。

 総選挙は、事前にメディアが予想した通り、民主党の大勝、自民党の惨敗で終わった。民主党の得票数が47.41%で獲得議席が73.66%という結果が出た小選挙区制の「レバレッジ効果」は、有権者にとってある意味では恐ろしい。前回の総選挙では、ほぼ真逆の勝敗でそれを感じたわけだが、この仕組みでいいのかと改めて考えさせられた。

 民主党は、マニフェストに衆議院議員の定数を比例区を中心に2割程度削減することを謳っている。議員数の削減には大いに賛成だが、選挙結果のブレがますます大きくなるのは些か不安だ。また、二大政党以外の政党をさらに排除することになるだろう。政権交代があるのはいいことだが、前回の自民、今回の民主、何れも勝ち過ぎだと思う国民は少なくないのではないか。

すっきりしない敗因分析

 民主党の大勝というよりも、自民党惨敗という印象の強い今回の選挙に関して、メディアの敗因分析はもう一つ釈然としないし、相互に奇妙にずれている。

 『読売新聞』は7月31日の社説で「小泉内閣の市場原理主義的な政策は、『格差社会』を助長し、医療・介護現場の荒廃や地方の疲弊を招いた」と「構造改革路線の行き過ぎ」を指摘している。

 だが、構造改革なるものはどれほど行われて、どんな効果をもたらしたのか。率直にいって、筆者は、構造改革が十分に行われたという感じがしていない。道路公団、郵政などの民営化は中途半端で、しかも進行がきわめて遅い。政策投資銀行の民営化は実現の時期が読めなくなってしまった。民営化路線に賛否はあろうが、当初の勢いからすると「もっと出来たはずではなかったか」との思いがぬぐえない。また、タクシー参入や製造業派遣への規制緩和は、需給の緩和を通じて従業者一人当たりの収入が減った効果があったとしても、雇用を増やした効果もあるはずだ。測り方にもよるが、むしろ「格差」(それも「失業」という深刻な状態)を縮小する効果があったのではないか。

  『朝日新聞』の分析は、少し分かりにくい。「うねりの原因ははっきりしている。少子高齢化が象徴する日本社会の構造変化、グローバル化の中での地域経済の疲弊。そうした激しい変化に対応できなかった自民党への不信だ」(31日「社説」)と説き、これに国民の閉塞感と将来不安を加える。原因の如何に関わらず現状に不満なら政権を変えてみようと思うのがある種の選挙民心理であるとしても、自民党の政策の何が問題だったのかを具体的に述べてはいない。