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インキュベーションの虚と実

プチバブルでも必要なところにカネはない!?
背景にある日本のベンチャー投資家の未熟さ

本荘修二 [新事業コンサルタント]
【第30回】 2013年7月8日
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第28回でスタートアップの初期段階であるシード/アーリー投資の後の段階(シリーズA以降)について、投資のプチバブル化の兆しと問題を書いた。その一方で、シード投資や、それに続くシリーズAの前の段階であるアーリー・ステージにカネが回っていない。特に、シード投資のマネーは歴史的にカネが不足している。

 少し前までのソーシャルゲームやスマートフォン関連の事業といった、誰もが事業を興そうとする流行りの分野(セクシーな分野)は注目され、シード投資やアーリー・ステージにあるスタートアップにも多少はカネが回った。しかし、事業化へ時間がかかるテクノロジー分野、例えばハードウェアや材料などは、金欠であえいでいるスタートアップが多い。

 総じて、日本ではスタートアップのためのリスクマネーが薄く、また偏り、いびつな構造になっている。これには、どういう背景があるのか。

日本にリスクマネーはないのか
未だに個人保証を求める時代錯誤

 背景には大きく二つの要因がある。一つは、スタートアップについての社会の受け入れの乏しさだ。できたばかりの会社など、いつ潰れるかも分からない。そこにカネを出すなど例外中の例外。だから、起業家は家族や友人のカネに頼るしかない。

 米国ではベンチャーキャピタルが立ち上がった1960年代から、時間をかけてシードマネーを出すエンジェルなどの社会的なインフラが育っていったのと、対照的だ。

 もう一つは、日本にはリスクマネーという発想が欠けていることだ。スタートアップに対して投資をする時、個人保証をつけろと間接金融的な視点を持つことなど日本では当たり前だ。これは借入でなく直接金融(株式投資)で起こっていることなのだ。程度の差こそあれ、これはいまでも続いている。

 成功したら果実はもらうが、失敗しても社長さんお金返してよ、とはムシのいい話だ。こうしたことは、金の需給バランスが大きくゆがんでいるからこそ頻発してしまう。

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本荘修二 [新事業コンサルタント]

多摩大学客員教授、早稲田大学学術博士(国際経営)。ボストン・コンサルティング・グループ、米CSC、CSK/セガ・グループ会長付、ジェネラルアトランティック日本代表を経て、現在は本荘事務所代表。500 Startups、NetService Ventures Groupほか日米企業のアドバイザーでもある。


インキュベーションの虚と実

今、アメリカでは“スタートアップ”と呼ばれる、ベンチャー企業が次々と生まれている。なぜなら、そうした勢いある起業家たちを育てる土壌が整っており、インキュベーターも多く、なにより、チャレンジを支援する仕組みが存在するからだ。一方の日本はどうなのだろうか。日米のベンチャー界の環境の変化や最新のトレンドについて、25年にわたってベンチャー界に身を置いてきた本荘修二氏が解説する。また日本でベンチャーが育ちにくいと言われる背景を明らかにし、改善するための処方箋も提示する。

「インキュベーションの虚と実」

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