投資型医療という新しい考え方

山本 医療はまず、健康を守ることを重要視すること。避けられるはずの病気になった患者さんがいたら、医療業界の関係者として恥ずかしい、申し訳ないと感じてほしいし、実際に海外ではそうした点を評価指標にする医療も出てきているんですよ。

 ですが日本の場合は、国が決めた保険医療の枠組みがある。そのせいか、一番悲しいのは業界の中にいるプロフェッショナルたちが、こうしないと報酬がもらえないんだということと医療の価値を混同してしまうことです。

 マネーゲームになっている。

山本 そうなんです。目の前にいる患者さんの健康や生活をもっと支援したいと思っていても、それは病院の仕事じゃないだろうという話になる。オペレーションのマネジメントや、組織論を考えようと呼びかけても、うちの病院にそんな話ができる人は誰もいないとゼミの卒業生たちが嘆いている声を耳にすると、何とかしなければと思います。

 これからの医療業界に必要なのは、できればナショナルレベルで発言できるパイオニアの存在です。だから山本さんにそうなっていただきたい。

山本 私もそうなりたいと思っています。でも、医療って実はとてもニッチなんですよね。社会を動かしていく役割を担う世代にとって、やはり医療は遠い存在だとみなされているんですよ。

 理由は簡単で、自分が健康だからです。医療が本当に必要になったときには、社会を動かすために声を振り絞る力も残っていないでしょう。今の社会を動かしている人たちにこそ医療のことを当事者として考えてほしいですし、仲間やサポーターを増やしたいのですが。

 一般人は普通、医療のことを考えたくないですからね。

山本 自分が病気になったときのことを考えると不安になるから、考えたくないんですね。だから健康に投資するという考え方にシフトしてほしいと言っています。病気のことを考えなくてもいいから、今の健康を維持するために、これからの医療は投資型医療だと考えてほしいと。ただ、ヘルスケアという言葉を使っても、まだまだ医療は治療という意識が強い。

 ケアではなくて、プリベンションですね。

山本 そうです!予防が大事なんです。