株式レポート
7月8日 18時0分
マネックス証券

第1次通告は受け取った PART2 リスクオフの完全なる終焉 - 広木隆「ストラテジーレポート」

マーケットメールというものを書いている。朝刊では前日の米国市場の動きを、夕刊では日本市場の動きを総括するものだ。僕は、このストラテジー・レポートでは情緒的なことを冗長に書いているが、マーケットメールはまったくその逆で、市場で起きたことを客観的に簡潔にまとめている。だから、日経マネーが投資家1万人を対象にしたアンケート調査で高い評価をいただき「特に朝のコメントには曖昧性が少ない」という声もあった。

想像だが、このストラテジー・レポートの読者の大半の方がマーケットメールをお読みいただいてるのではないか。小学校の算数でやった集合のベン図でいうと、「交わり」の部分が大きいと思う。しかし、交わっていない部分(「差集合」もしくは「相対補集合」)も当然あるわけで、そうした「差集合」の方のために、今日はマーケットメールでどんなことを書いているかご紹介したいと思う。以下は7月8日付けのマーケットメール朝刊のコメントである。原文のままであるが但し、グラフは原文にはない。よって、朝にこのコメントをすでにお読みいただいた方にとっても、改めてグラフで視覚的に理解することができると思う。

マーケットメールでどんなことを書いているかご紹介したい、と述べたけど、このレポートの趣旨は、もちろん、そんなことではない。趣旨は、このレポートのタイトルの通りである。

7月8日付けマーケットメール朝刊

米国株、大幅続伸 雇用統計を好感 日本株も続伸見込みだが一方で短期的な過熱警戒感も

先週末の米国株式市場は大幅続伸。ダウ平均は前日比147ドル高の1万5135ドルと、6月18日以来、約2週間ぶりの高値で終えました。朝方発表された6月の雇用統計で非農業部門の雇用者数が前月比19万5000人増と、16万5000人程度の増加を見込んでいた市場予想を3万人も上回りました。発表された直後の市場の反応はドル高、金利上昇、そしてグローベックスのS&P500先物も上昇しました。現物株の取引が開始されるとダウ平均は小幅高となりましたが、金利上昇を嫌気してほどなく下落に転じました。しかし下値は限定的で底堅く推移すると再び上昇基調を強め引けにかけて一段高、結局ダウ平均は高値引けとなりました。

雇用統計では失業率は7.6%で変わりませんでしたが、これは労働参加率が2カ月連続で上昇したことによるものと見られています。ポイントは新規雇用者数の6月分が市場の予想を上回ったことだけでなく過去2カ月分が上方改定されたこと。4、5月はそれぞれ19.9万人、19.5万人に引き上げられ、失業率を安定的に低下させるのに有効と考えられる月20万人に近い雇用者数の増加が3カ月並んだ格好になりました。加えて、民間労働者の平均時給も前月比0.4%増え2008年11月以来の高い伸びとなるなど総じて良好な内容となりました。雇用も賃金も増えるとなると、本格的な景気回復への確信が高まります。

この統計内容を受けて10年債利回りは急上昇。2.74%となり、2011年8月1日以来、約1年11カ月ぶりの水準まで上がりました。米国景気の改善、量的緩和の縮小、米国金利上昇といった流れを受けてニューヨーク外国為替市場で円相場は下落し、1ドル101円15〜25銭で終えました。

この日の市場の反応は、今後の相場の方向感を明確に示したと思われます。ポイントを整理しましょう。

① 月20万人に近い雇用者数の増加が3カ月並んだ格好となり米国労働市場の回復は確固たる足取りとなっている(グラフ1)。



② これでFRBの量的緩和縮小開始のタイミングは9月からが濃厚となったと思われる。

③ 量的緩和縮小、金利上昇を嫌気して一旦は米国株が売られたものの、切り返して高値引け。ダウ平均が、バーナンキ議長がFOMC後の記者会見で量的緩和縮小の時期に言及した6月19日の終値水準も上回ったことで、米国株式市場はいわゆる「バーナンキ・ショック」を乗り越えた(グラフ2)。量的緩和縮小、金利上昇を織り込んだ、さらに言えば、それらのマイナス面を乗り越えて、それらが示すプラスの面を好感し始めたということである。



そして、ここが非常にシンボリック(象徴的)な点ですが、
④ 10年債利回りが2.7%台を超え2011年8月1日以来の水準まで上昇した(グラフ3)。2.7%台に乗せた11年8月は、スタンダード・アンド・プアーズ(S&P)が米国長期国債の格付けを「トリプルA」から「ダブルAプラス」に格下げした時。皮肉にもその後からリスク回避の動きが広がり世界の資金は米国債に向かい利回りが急低下していった。今回、その水準まで戻したということは、過度なリスクオフの世界が完全に終了したということである。最近起きている金相場の低迷と併せて考えると、より構図が明確になるだろう。



週明けの日本株市場は、米国市場の反応を受けて続伸スタートとなりそうですが、問題はその後。6月末から短期間で大幅上昇してきただけに短期的な過熱感に対する警戒もあり、一気に上値を追うのは難しそうです。雇用統計という重要イベントを過ぎたタイミングで一旦利益を確定したい向きもいるでしょう。


(チーフ・ストラテジスト 広木 隆)

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(マネックス証券)


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