順調に拡大を続けてきた薄型テレビ市場の前途に暗雲が立ち込めている。想定どおりに大画面化が進まず単価が下落、さらに液晶パネルが不足、製品の供給もままならない。クリスマス・年末商戦を控え、薄型テレビ事業は苦境に立たされている。

 「パネルがどこにもない」――。

 クリスマス・年末商戦を控えて、電機メーカー各社が液晶パネルの調達に苦心している。韓国LGフィリップスや台湾奇美電子など主要パネルメーカーの供給が逼迫しており、「パネル不足で液晶テレビは(2007年度)上半期の販売目標を下回った」(大坪文雄・松下電器産業社長)メーカーも出た。供給過剰でだぶついていた昨年からは想像もつかない事態に、各社とも「半ばパニック気味」(業界関係者)に、調達に奔走する。順調に販売を伸ばしてきた薄型テレビだが、突然の“変調”に足をすくわれた格好だ。

 春先から、変調の芽はあった。今年の3月頃まで供給がだぶつき、価格下落が続いていた液晶パネルが、4月以降、パソコン(PC)用パネルの需要急増で価格が上昇に転じる。もともと需給調整のため供給を絞っていたのに加え、パネルメーカー各社は、利幅が数パーセント程度のテレビ用パネルより、20%以上はあるPC用パネルへと生産を一気にシフトさせた。その結果、テレビ用パネルの供給が逼迫したのだ。

液晶パネルの需給逼迫は続く

 右のグラフで示したように、2007年の第1四半期(1~3月)に生産能力が余っていた液晶パネルが、一転、第3四半期(7~9月)には需要が生産能力を超え、供給不足に陥っている。10月以降も需給の逼迫状態は続いており、「来年も(パネル調達の)厳しい状況は続くのではないか」(鳥居寿一・ディスプレイサーチTV市場担当バイスプレジデント)と見られている。

大画面化の目標を撤回したシャープ

 薄型テレビ市場の変調は、それだけにとどまらない。