昨年の暮れに、米国オーランドで行われたガートナーの年次ITシンポジュームにて、アナリストのDavid Cappuccio氏が今後5年のITにおける10大トレンドと題して講演した。

 その中で、氏は“従来のITで簡単にコントロール出来ない新しい力(フォース)が今後のIT支出のマジョリティになるだろう”と述べた。

 そのフォースの中で特に急激な変化を起こしているのが、次の3つ。

 ●クラウドコンピューティング
 ●SNS
 ●携帯情報マネージメント

 また、これらはスマホ、タブレットといった新しい携帯端末をサポートし、アイデンティティ管理(IM)を必要とするが、この急速な拡大もまだ序の口であるとも述べている。

 スマホ・タブレット市場の現状はまだまだ、との氏の表現からは、今後のさらなる市場の拡大が我々の想像を遙かに超えるものであろうことを容易に想像させる。それらが既存のIT及び、業界に及ぼす具体的なPositiveとNegativeのインパクトの大きさまで想像することは難しい。そこで氏が指摘した今後5年間のITにインパクトを与える10大トレンドについて改めて考えて見たい。

1.創造的破壊

(抄訳):ビジネスユーザーはITの生産性と安全性をますます高く求めるが、同時にコンシューマーと同じようなサービスとサポートを期待するようになる。よってサービスデスクやサポートには高い技術レベルと優しい対応力が同時に必要になり、従来のサポートモデルが崩壊する。

(解説):私の富語録(ふごろく、富田語録の略)に、“人に優しくない技術は未熟段階”と明言されて久しい。ビジネスであるか否かは程度問題の差でしかなく、ビジネスとコンシューマーに2極化していたのは、技術が未熟で、2極のそれぞれに特化しないと対応仕切れなかったからにほかならない。

 極端な例かも知れないが、今やドライバーのプロ中のプロであるF-1パイロットでさえクラッチ操作を伴うギヤシフトは行わない。ほぼオートマチックのミッションコントロールをしているのである。数十年前ならば、マニュアルシフト=技術力のある運転手、オートマチック=初心者的(=コンシューマー)との認識があったが、運転のプロ中のプロであるF-1パイロットでさえ高次元なオートマチックを使う状況になった。

 結果、コンシューマーが使うオートマチックにも手元で簡単に素早くシフト操作を行うF-1パイロット用に開発された“パドル”なるものがつくまでになった。私はこれを創造的破壊(Creative Disruption)と呼びたい。