経営×ソーシャル
ソーシャルメディア進化論2016
【第35回】 2013年7月23日
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武田 隆 [クオン株式会社 代表取締役]

【松岡正剛氏×武田隆氏対談】(その4)
インターネットはそろそろ
アメリカ発の真似だけでは通用しなくなる

過去3回にわたってお送りしてきた松岡正剛氏との対談もついに完結。その対談の冒頭は、武田隆氏のこんな問題提起から始まった。
「これからのインターネットは、アメリカから学ぶことは以前ほど多くない、と感じているんです」。
フェイスブック、グーグル、ツイッターなど、世界的な成長企業の多くはいまもアメリカから巣立っている。にもかかわらず、アメリカ発のものを真似しているだけでは通用しなくなると考えるのはなぜだろうか?

ソーシャルメディアの次なる発信地は、
シリコンバレーではなくヨーロッパ?

武田 2000年に、友人の会社の起業支援でシリコンバレーに1ヵ月だけ滞在しました。スタートアップ企業界隈のダイナミックな資金の動きと、脳天気に晴れわたる天候に「これがシリコンバレーか!」と感動しました。

 あれから10年以上が経ち、これからのインターネットは、アメリカから学ぶことは以前ほど多くない、と感じるようになりました。

松岡正剛(まつおか・せいごう)
編集工学研究所所長。
雑誌『遊』編集長、東京大学客員教授、帝塚山学院大学教授をへて、現在、編集工学研究所所長・イシス編集学校校長。日本文化、芸術、生命哲学、システム工学など多方面およぶ施策を情報文化技術に応用する「編集工学」を確立。執筆・講演・企画・構成・プロデュース・監修・演出などを数多く手掛ける。また、日本文化研究の第一人者として、「日本という方法」を提示し、独自の日本論を展開している。2000年2月から連載中のブックナビゲーション「松岡正剛の千夜千冊」は、月間100万ページビューを超える。現在、平城遷都1300年祭「日本と東アジアの未来を考える委員会」幹事長ほか、モデレーターとしての仕事も手がけている。

松岡 そうでしょうね。でも、なぜそう思ったんですか?

武田 もともとコンピュータのハードウェアの最新情報は、シリコンバレー(の一部のコミュニティ)から世界に拡がっていく構造がありましたから、コンピュータやインターネットの新しいプロダクトやサービスも、やはりアメリカから生まれてきました。

 でもソーシャルの時代になると、インターネットがそれぞれの地域コミュニティのなかで、ローカライズされて使われるようになります。

松岡 そうなると、今までのようにアメリカ発のものを真似しているだけでは通用しなくなる、というわけだね。

武田 はい。そこで、エイベック研究所の海外拠点をどこに置こうかというテーマになったとき、アメリカではなくヨーロッパに行こう!ということになりました。マゼラン海峡から「Zipangu(ジパング)」を目指したデ・リーフデ号(1600年に日本に漂着したオランダの商船)と逆の航路ですね(笑)。

 視察を繰り返すうちに、その直感は当たっていたと思うようになりました。ヨーロッパの市民社会の成熟を目の当たりにして、これこそ日本が輸入し忘れたものだと感じるようになったんです。

松岡 ほう、どこを回ったんですか?

武田 いろいろ訪ねましたが、とりわけ衝撃を受けたのはオランダとドイツです。

松岡 オランダって、ハッカーのメッカだった時期があるんですよね。武田さんは、そこじゃなくて、むしろ伝統的な部分に感動したんでしょう?

武田 はい。オランダは国土の表面積の26%が海面下という厳しい立地条件で、埋立地も多く、そうした場所に北海の漁業・商業の拠点をつくる。首都アムステルダムもそうです。さまざまな国籍の人が移り住むことが前提となっている。厳しい環境ゆえの、生まれながらの国際都市なんですね。

 とてもインターネット的な成り立ちの街だな、と思ったんです。人種も宗教も価値観も違う人々が、洪水の危険に身をさらしながら生きている。そんな困難な条件のなか、コミュニティを500年以上もかけて成熟させてきた。オランダが辿ってきた歴史や、直面し解決してきた課題の多くを、これからのインターネットもトレースするはずだと。

武田 隆(たけだ・たかし) [クオン株式会社 代表取締役]

日本大学芸術学部にてメディア美学者武邑光裕氏に師事。1996年、学生ベンチャーとして起業。クライアント企業各社との数年に及ぶ共同実験を経て、ソーシャルメディアをマーケティングに活用する「消費者コミュニティ」の理論と手法を開発。その理論の中核には「心あたたまる関係と経済効果の融合」がある。システムの完成に合わせ、2000年同研究所を株式会社化。その後、自らの足で2000社の企業を回る。花王、カゴメ、ベネッセなど業界トップの会社から評価を得て、累計300社のマーケティングを支援。ソーシャルメディア構築市場トップシェア (矢野経済研究所調べ)。2015年、ベルリン支局、大阪支局開設。著書『ソーシャルメディア進化論』は松岡正剛の日本最大級の書評サイト「千夜千冊」にも取り上げられ、第6刷のロングセラーに。JFN(FM)系列ラジオ番組「企業の遺伝子」の司会進行役を務める。1974年生まれ。海浜幕張出身。


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