ビジネスは、仮説を立てて、試して、
結果を見てフィードバックをする

エリック 目標を追いかけるときには、ときに迷うことがあります。もし迷ったなら、他の人をハッピーにするような方法を採ってください、と伝えています。それさえやっていれば、正しいから。自由だけれど、当社にはひとつのポリシーがあるんです。それが、Be nice policy。ナイスでいよう、と。例えば批判をするときにも建設的な批判をする。意地悪で、おとしめてやろうという批判ではなく、建設的な批判をするようにしています。

仕事と趣味の境界線を曖昧にする。<br />仕事が趣味になれば、いつでも楽しいはず<br />【企業インタビュー:インストラクタブルズ編】インストラクタブルズ社内

本田 ルールで縛り上げることだけが、コントロールできる唯一の方法ではまったくないんですね。ところで、エリックさんのバックグラウンドは何ですか?

エリック 機械工学の博士号とMITでとってまして、小さい頃から飼い犬を追っかけるようなロボットを作ったりしてました(笑)

本田 自分が好きだったことをビジネスにしたっていうことですか。

エリック すごく長い時間一つのことに集中できるし、いろんな関心があったので、どんな仕事もできたと思うんです。ただ、ちょうどお金も集まったし、投資家も出てきた。なんかキラキラした輝かしい機会にも見えた。そんな機会があるんだったらそれをやってみてもいいじゃないか、Take it。それをやってみようじゃないかと思ったんです。だから自分の趣味を一生懸命仕事にしましたっていう意識はあまりないんです。それよりも、この目の前にある面白い機会をとりあえず自分のものにしよう、そこにのってみようと。おそらく自分のキャリアにおいて、将来もそうじゃないかなと思います。

本田 仕事と遊びの垣根をなくすっていうことはみんな考えているんだけど、エリックさんは、ちゃんと収益モデルを考えた上で、ビジネスの仕組みっていうか、だからできてると思うんですよ。多くの人はこれを考えられないからできない。単に好きなだけでは、ここまで思いつかない。

エリック 僕のビジネスがなんで上手くいったかは、もちろん運もあるんだけど、もう一つは、科学的な方法論がビジネスでも通用するんじゃないかと思ったんです。つまり、仮説を立てて実験をして、その結果を見てからまた戻って、もうちょっと試すみたいな。最初、広告は結構早期に試したものなんです。それで試してみたら、なかなか上手くいきそうな分析結果が出たので、じゃあ、もっとリソースと努力をそこに傾けたわけです。ひょっとしたらそこでもっと別のチョイスがあったかもしれないし、それで上手くいったかもしれない、上手くいかなかったかもしれない。だけど、それは試してないからわかりません。

 要は、何も知らないっていうところから始めるということなんです。しかし、実験自体はコントロールされた、ちゃんと制御された方法でやらなきゃいけない。それが科学的な方法だと思うんですね。何が違うかって、仮説を立てて、それを試して、結果を見てフィードバックをすること。推定でもって動くのとは全然違うもの、よく似てるけど違う。で、例えばプロメンバーシップ。有料のメンバーシップは、2009年に始めたんです。サイト自体は2005年からオープンしてますが、2008年に不況があって広告収入が減っちゃった。その広告収入が減ったことは、自分にとっては解決すべき問題で、科学的問題として目の前に現れてきた。それを解決するのにどうしたらいいかっていう仮説を立てたのが有料のメンバーシップ。それを実験的にやってみたら、早期の分析で上手くいきそうだっていうことがわかったので、実際に構築することにしました。

本田 なるほど。今日は、とても参考になりました。有難うございました。

※次回は7月24日更新予定です。


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仕事と趣味の境界線を曖昧にする。<br />仕事が趣味になれば、いつでも楽しいはず<br />【企業インタビュー:インストラクタブルズ編】

本田直之(ほんだ・なおゆき)
レバレッジコンサルティング株式会社代表取締役社長兼CEO
シティバンクなどの外資系企業を経て、バックスグループの経営に参画し、常務取締役としてJASDAQへの上場に導く。現在は、日米のベンチャー企業への投資事業を行うと同時に、少ない労力で多くの成果をあげるためのレバレッジマネジメントのアドバイスを行う。東京、ハワイに拠点を構え、年の半分をハワイで生活するデュアルライフを送っている。

幸福度ランキングトップの北欧(デンマーク、スウェーデン、フィンランド)の人たちと幸福について語り合って著した近著『LESS IS MORE 自由に生きるために、幸せについて考えてみた。』(ダイヤモンド社)が話題になっている。
このほかの著書に、ベストセラーになったレバレッジシリーズをはじめ、『ノマドライフ』(朝日新聞出版)、25万部を越えるベストセラーとなった『面倒くさがりやのあなたがうまくいく55の法則』『ゆるい生き方』『7つの制約にしばられない生き方』(以上、大和書房)『ハワイが教えてくれたこと。』(イースト・プレス)などがある。
著書は累計200万部を突破し、韓国、台湾、中国で翻訳版も発売されている。