価値があるものは決して安売りしない

 妥当なコミッションはどのくらいなのか。
 業界の慣習に関係なく信頼できる会社に自由に取り扱ってもらう方法はないか。
 予約人数を把握するために、航空業界が使っている予約システムを使わせてもらうことはできないか――。


 こうして作り上げてしまった独自のプランは、業界をかなり驚かせてしまったようです。

 旅行会社を回る中で必ず叱られる試みもありました。
 例えば、お弁当の持ち込み禁止。バスツアーでは、お弁当も旅行会社の利益を稼ぎ出す重要な商品なのです。そこで私は一計を案じました。抜け穴のようですが、お互いの利益を担保できるよう、パークの外でのツアー内容については関知せず、としたのです。そうすることで、入園直前のバスの中でツアー客にお弁当を提供するツアーもあったようです。

 また、バスの運転手やバスガイドさんは、普通のツアー中はすべて食事が提供されます。ところが、東京ディズニーランドでは無料で園内に入れることさえしなかった。そこで、バスの停車場の近くに、ドライバーやバスガイドさん専用の食堂を作ったのです。これがどこにあるのかは明かせませんが、なかなかおいしい軽食を出してくれます。

 私は、とにかく自分が働いている東京ディズニーランドという場所が大好きでした。空間も、キャラクターも、フィロソフィーも。だから安売りしたくなかったし、価値を下げるようなことはもっとしたくなかった

 なんだか叱られてばかりのようですが(そしてその通りなのですが)、その一心で作り上げたプランでしたから、「そういうものだ」と思ってもらえるまで続けることが大切ではないかと思います。

 *次回は7月23日の更新です


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