どんなことでも創意工夫の余地がある

トラックレコードなき起業家は<br />門前払いの国・日本で<br />飛躍のきっかけをどう掴むのか新 将命(あたらし・まさみ)
1936年生まれ。早稲田大学卒業後、シェル石油、日本コカ・コーラ、ジョンソン・エンド・ジョンソン、フィリップスを含むグローバル・エクセレント・カンパニー6社で40年にわたり社長職を3社副社長職を1社経験。2003年より住友商事を含む数社のアドバイザリー・ボードメンバーを務める。長年の経験と実績をベースに、経営者や経営幹部を対象とした経営とリーダーシップに関する講演・セミナーをし、国内外で「リーダー人財開発」の使命に取り組む一方で、経営者・経営者グループに対する経営指導、相談役も果たしている。自身のビジネス人生で得た実質的に役立つ独自の経営論・リーダーシップ論は経営者や次世代リーダーの心を鼓舞させ、講演会には常に多くの聴講者が詰め掛けている。
著書に『経営の教科書』(ダイヤモンド社)『伝説の外資トップが説く リーダーの教科書』(ダイヤモンド社)、『伝説の外資トップが説く 働き方の教科書』(ダイヤモンド社)、『コミュニケーションの教科書』(講談社)など。またオリジナル教材『経営・リーダーシップ実学』やCD教材等も。

新将命 公式サイト

 社会人として動作所作は学べましたか?

出雲 とても貴重な経験になったと思っています。銀行の業務でつまらないことはありませんでした。

 たとえばATMに金銭補充を行う業務があるのですが、「今日は五十日だ」とか「金曜日の給料日だ」といったことに注目していくと、銀行が混む日や時間帯がわかってきます。私は神保町店に配属されていましたので、雨の日だと古書街に人があまり来ないから銀行は混まないんですね。そういうことを考えながら自分の業務の効率化を図るんです。

 金銭補充ひとつとってみても、アンテナの方向を変えるだけで得られるものがとても増えますから、仕事につまらないことなんてないんだと思えたことは非常に大きかったです。

 子どものころから自分で創意工夫することが好きだったんですか?

出雲 そんなに高尚なことを考えていたとは思っていません。ですがたとえば、何かの本でザリガニが高級食材になると知った私は、自分で釣ったザリガニを養殖しようと試みたり、クワガタを捕まえて売ろうと計画したりということはありましたね。

 そこが違うんですよ。私が小学生のころはザリガニを釣りに行って、それを食べていましたからね。タニシなんかも食べたな。ザリガニを見て売ろうと思うなんてこりゃ能力的なギャップだな。

出雲 ご謙遜なさらないでください。私は東京の多摩ニュータウンで育ちまして、父親はサラリーマンで母親は専業主婦。そして私と弟という、きわめて一般的な家庭に育ったごく普通の子どもでした。もちろん起業なんて考えたこともなく、高校生くらいまでは、この世にはサラリーマンと公務員、2種類の仕事しかないと思っていたくらいでした。

 テレビに映っている人たちは私とは別世界の人たちで、普通はサラリーマンか公務員のどちらかを目指して就職するものだというくらいにしか考えていませんでした。自分が社長になりたいとか、ベンチャー起業を立ち上げたいとか、そういったことは想像したこともなかったですね。