中国 2013年7月26日

中国人にとって、価格の割引は面子の問題!?
中国・成都の焼肉店「牛牛福」風雲記【第7回】

お金儲けの神様「邱永漢」人生最後の弟子で、2005年より中国四川省成都に在住。日本生まれの韓国人で、現在はグループ会社3社の社長兼取締役を勤める金さんと、焼肉店「牛牛福」との9年間にわたる格闘の日々の記録。第7回はオープン3日後から陥った深刻な事態……。その原因には、2つの大きな勘違いがあった!

第1回「邱永漢氏に出会い、現職を投げ打って成都行きを決めるまで」はこちら

第2回「ホテル事業を夢見て成都に渡った3日後に告げられた事実とは」はこちら

第3回「焼肉店改行準備で体験した、パソコン購入のための中国式交渉術」はこちら

第4回「開店に向けての市場分析と、人事・料理長・店長の人事問題」はこちら

第5回「事業立ち上げで直面したワイロ大国の実態」はこちら

第6回「感動の1号店オープン! 大盛況の3日後から突然……」はこちら


 商売は自分との戦いであり、市場との恋愛です。レストランの本質を考え、自分との戦いをはじめるにあたり、“今”を再確認することにしました。

 実を言うと、第1号店を始めた場所はレストランにとってはかなり不利な場所でした。

 成都の消費者にはいくつかの特徴がありますが、その中に「複数のレストランの集まる場所に行く」という、他地域と比べても非常に強い傾向があります。その意味からすると、牛牛福をオープンした場所はまわりに何もなく、かつ大通りから見えない場所に位置しており、成都の人が集まるとは言いづらい場所でした。

 このことをひしひしと感じたのは、工事を終えたばかりの内装会社の社長の言葉でした。

 「キムさん、私も商売だから発注を受ければ何でもやるけど、この場所でレストランをやるのはきついんじゃないの。もしここで商売がうまくいったら本物だよ」 

闘いの3原則

 “場所が悪い”。このひと言がオープン後も重く脳裏にこびりついていました。売上不振が何日も続くと、従業員もそのことばかりを口にするようになりました。

「これではいかん。従業員まで悲観的になるようでは、間違いなく経営者が悪い」と思い直し、自分の気持ちを引き締める意味で「闘いの3原則」を心に刻みました。

闘いの原則1:「言い訳をしない。今を認め改善する」
 商売がきつい状況に陥ると、経営者はありとあらゆる負の要素を持ち出して自分の商売が悪い理由を説明しようとします。しかし経営に“だからしょうがない”という言葉はありません。今を認め、弱みを強みに転換する努力をする。そもそも経営とは問題の連続であり、それを“どうにかする(manage)”のが経営(management)です。

闘いの原則2:「完全を目指す」
 42.195キロのマラソンの勝敗を決定するのは、ゴール前のフィールド内の最後の1周だといいます。最後まで気を緩めず走りきることで、はじめて勝利を手にすることができる。詰めがもっとも大切です。

闘いの原則3:「顧客をとことん喜ばす」
 顧客の喜びの大きさが、財布のひらき具合を決定する。利益とは顧客の喜びの総体である。

 この3原則を胸に考えを突き詰め、私なりにたどりついたレストランビジネスの本質は実にシンプルなものでした。

「レストランはおいしいものを出さなきゃだめよ」

 なぜお客さまがうちに来てくれるのか。なぜあなたはあの店を選ぶのか?

 お客さまが店を選ぶ際、自分でも明確に意識していないポイントというのが必ずあるものです。しかもそれは、決して難しい話ではないのです。

・ 家から近い
・ おいしい
・ 子どもが座れる畳がある
・ 接客がいい
・ 友達においしいと言われた
・ 安い
・ 割引をやっている
・ インテリアがきれい、特別
・ 質がいい
・ 会員カードを持っている

 挙げればきりがないですが、この中で大切な要素というのは数点しかないはずです。そのことにはっと気づいたのは忘れもしないオープンの日、邱先生の奥様が食後におっしゃった言葉でした。

 「キムさん、おいしかったわ。レストランはね、おいしいものを出さなきゃだめよ」

「レストランはおいしいものを出さなきゃだめよ」……。長期的なお店の成功の鍵は、やはりお客さまが喜んで、おいしいと思ってくれるかどうかなんです。

 場所や宣伝のどちらかに頼って繁盛している店は、悪くいうと勘違いしやすい。自分の実力以上に繁盛しても、長期的な発展は望めない。

 こう考えると、「今の場所の悪さは身に染みて辛いけど、これも“商売の原則を学びなさい”と先生からいただいた課題だ」と覚悟が決まりました。

現在もそのまま残されている邱先生の執務机【撮影/金伸行】

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