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美人のもと

水と岩

西村ヤスロウ [広告プランナー]
【第157回】 2013年7月25日
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 暑い季節になると、水への憧れが強くなる。喉を潤すだけでなく、冷たくて気持のいいものを触れたくなる。川や海に出かけたくなる。水の中に飛び込むのも気持がいいし、見ているだけでも心が落ち着いていく。

 水の流れは美しい。なめらかで素直で透き通っている。全体が統一された動きを持ち、乱れない。写真、動画、絵画などその美しさを表現したものは無数にある。どこにでもある何気ないものをじっくり見ていると実に美しい。見ていて安心する。

 美人は水になることがうまい。流れに逆らうことなく、周囲に溶け込む力を持っている。人の流れに対して従順である。

 特にそれがわかるのが混雑した場だ。電車の中、エレベータの中、行列、デパートなど、他人との距離を保ちたくても保ちにくい状況にある時だ。そこでは人が自由な動きを取ることが難しくなる。その時に水になれるか。他人との距離を最適化し、自分がどこにいることがいいかを考える。もし、誰かが動こうとすると、それをできるだけ妨げない位置にすばやく動く。

 わかりやすいのは電車での立ち位置だ。乗り降りがある出入口付近に立ち止まることなく、できるだけ奥の空いている場所に立つ。そこでも誰かが動こうとすれば、すばやく対応する。

 他人の邪魔にならないように水になる。それは自らが気持よくなることでもある。他人にぶつかることも少なく、不快な場所でもできるだけ快適にすごすような工夫が身についていて自然と表情も美しくなる。

 水になる人もいれば、その流れを妨げる岩になる人もいる。何かと邪魔になる人だ。電車に乗る時に、出入口で動かない岩だ。見るとたいてい不快な表情をしている。他人の妨げになっているにも関わらず、ぶつかって迷惑だと言わんばかりである。たった一つの岩が水の流れを不自由なものにしていく。ひどい場合は岩と岩がぶつかってにらみ合っている。表情もまさに岩のにらみ合い。岩の瞬間は「美人のもと」が減っていく時だ。

 ほんの少しの移動でいい。デパートのエレベータの中など数歩動けばいいのだ。最適な位置に立つだけでその場の空気をきれいにできる。その空気にこそ「美人のもと」が含まれている。

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西村ヤスロウ [広告プランナー]

1962年生まれ。プランナー。趣味は人間観察。著書に『Are You Yellow Monkey?』『しぐさの解読 彼女はなぜフグになるのか』などがある。


美人のもと

『経』に好評連載中の西村ヤスロウ氏によるエッセイ。「美人のもと」とは、女性なら誰しも持っているもの、「美人のもと」を磨き続けるためのコツを解き明かす。

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