少子高齢化に長引く不況。外食産業が厳しさを増すなか、サイゼリヤだけは気炎を上げている。その裏には食材を種から作るこだわりと、食品加工工場を活用し、店舗作業を限界まで簡素化してきた積み重ねがある。正垣会長が目指すのは、外食企業の枠を超えた製造直販業だ。その戦略をじっくり聞いた(聞き手/『週刊ダイヤモンド』編集部 片田江康男)

正垣泰彦
撮影/住友一俊

 イタリア料理はすごくシンプルで毎日食べられる料理だ。それに、チーズや生ハム、ワインなど一緒に口にする飲食材の種類が豊富だから、組み合わせて楽しめる料理でもある。イタリア料理の豊かさや楽しさを日本に広げたいと思って創業した。

 だが、メニューの値段を気にしないで自分の好きなものを組み合わせることができないと、それは実感できない。だから単価は安くないとダメだ。

 うちの店で値段を気にしながら注文する人はそれほど多くないと思う。ようやく、サイゼリヤでもお年寄りがワインを飲みながら楽しそうに食事をしている姿が見られるようになってきた。40年たってやっと、自分が思い描いたことができ始めた。

 料理を安く出すのと同時に、社員には世間並みの給料を払わないといけない。しかし、(42年前の)創業当時の外食業の収益構造では世間の半分くらいしか給料は払えなかった。