様々な変化への兆しが見えたところで幕を閉じた2008年でしたが、2009年が明けて数ヵ月間は、相変わらずの悪化する指標と、減益、赤字が相次ぐ企業決算の数字を前に、世界の株式市場は低迷を続けます。特に日本に対しては、「景気減速」「資源高」「急激な円高」の三重苦の環境の中、経済の早期回復に厳しい見方が広がって行きました。

 政策協調を続ける先進国が、総じてマイナス成長予想に陥る中、今後の世界経済の担い手として、新興国が一気に台頭してくることになります。

米国経済の不振で、
日本の輸出が過去最大の減少

 2008年の9月以降、アメリカの個人消費が冷え込むのと時を一にして、日本の貿易額が急激に減少しました。2008年10月には、日本の輸出額は前年比で-7.9%とマイナスに転じ、その後月を追うごとに指標は悪化、2009年2月には前年比で-49.4%と過去最大の下げ幅を記録しました。

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 この輸出減の影響を最も受けたのが日本の輸出産業の花形である自動車業界でした。自動車の輸出額を見ると、2008年初頭には月間4000億円程度であった対米輸出額が、2009年1月には約800億円へとなんと5分の1に急減してしまったのです。日本の自動車産業の輸出のうち3割がアメリカ向けとなっていたため、アメリカにおける需要の急減が深刻なダメージとなったのは言うまでもありません。

 しかも、自動車産業は下請け企業や製造機器メーカーなど他産業への波及効果も相対的に大きい産業です。『通商白書2009』によると、全産業平均の生産波及効果が1.93倍である一方、輸送機械の生産波及効果は2.82倍であるとされており、自動車産業の減退が、日本経済全体にとって極めて大きな影響を与えることになります。

 このように自動車産業を中心に国内の経済活動が急減した結果、雇用にも深刻な影響を及ぼすことになります。失業率は2008年後半から5ヵ月連続で増加し、2009年3月には4.8%へと達しました。加えて「事業縮小の影響で休業/出向させている従業員」に対して支払われる雇用調整助成金の利用企業数が、2008年末の追加経済対策で支給要件が緩和されて以来激増し、雇用状況は失業率の数字よりも一層厳しいものとなっていったのです。