地方自治の取材を20年以上、続けている。全国各地の自治体を訪ね歩き、様々な行政現場に触れてきた。自治体トップへの直接取材も重ねており、これまで色々なタイプの首長に出会ってきた。

 たとえば、職員・市民に大号令を発するトップダウン型や、役所の論理を最優先させる内部調整型だ。また、パフォーマンスに傾注するお祭りタイプや、単なるお飾りの神輿のような人もいる。いまだに特定の組織や業界の代表者として首長権限を振るう、利権型も存在する。

 これまで数多くの首長にインタビューしてきたが、もの静かで奥ゆかしいというタイプは少なく、よく喋る自信家がほとんどだ。それも当然かもしれない。他人を押しのけて「オレがオレが」と前へ出てくるような人でないと、選挙になかなか勝てないからだ。

なぜ首長は民意を反映できないのか?
選ぶ側と選ばれる側の双方にある問題

 住民から直接選ばれる首長の最大の役割は、住民代表として行政組織のトップに就任し、民意を反映させた行政運営を行うことにある。自治体や自分を世の中に売り込むことがメインではない。民意をしっかり汲み取り、それを具現化するために行政組織を動かしていくことが、首長の使命だ。政策立案とその実行の最終責任者である(政策決定は議会の役割)。

 しかし、首長の役割をきちんと果たすことは、容易なことではない。むしろ、民意ではなく、行政組織の論理や都合を優先して行政運営する首長の方が圧倒的に多い。こうした民意を反映しない行政運営に異を唱え、改革を標榜して当選する人も生まれている。

 だが、そうした改革派首長も行政組織の中に入った直後に変節してしまったり、未熟さゆえに挫折してしまうケースがほとんどだ。民意に基づく行政運営は残念ながら、言葉だけの絵空事になっているのが悲しい現実だ。

 ではなぜ、そうした現象が広がってしまったのか。その要因は、選ぶ側と選ばれる側の双方にある。選挙によって民意が示されるという固定観念がある。