夏の高校野球が今週木曜(8日)に開幕するが、今大会の地方予選では「公立高校の奮闘」が話題を呼んだ。

西東京で都立日野高校が健闘
和歌山では古豪・箕島高が代表に

 そのひとつが西東京大会の決勝で日大三高に挑んだ都立日野高校である。3回戦で井口資仁(千葉ロッテ)、矢野謙次(巨人)らのOBがいる国学院久我山を破った日野は、その後も青梅総合、明大中野八王子、八王子実践、国士舘を撃破し、決勝に進出した。決勝戦の相手は一昨年の甲子園で全国優勝を果たした強豪・日大三高。都立校の決勝進出は28年ぶりであるうえ、もし勝って甲子園に出場するとなれば1980年の都立国立高校以来33年ぶりの快挙である。

 そんな興味もあって決勝戦が行われた7月28日の神宮球場には3万人を超える観客が集まった。しかし“東京の雄”日大三高の壁はやはり厚く、0-5で敗れた。とはいえ、人材確保や練習環境など、すべての点で条件が厳しい都立高の奮闘は感動を呼んだ。

 もうひとつ話題になったのは逆に強豪私立が敗れ、公立校が代表になった例。和歌山県のケースだ。敗れた強豪私立は戦後最多となる8年連続夏の甲子園出場を果たしていた智弁和歌山で、それに代わって出場権を得たのは古豪・県立箕島高校である。

 もっとも両校は直接対決しているわけではない。智弁和歌山は3回戦で県立紀北工業によもやの敗退。その紀北工は準々決勝で県立和歌山東高に接戦の末敗れ、その和歌山東を破った箕島高が、決勝の県立南部高にも勝って甲子園出場権を得たわけだ。

 箕島高といえば1970年代から80年代にかけて甲子園の常連だった古豪。その後、智弁和歌山の台頭もあって甲子園から遠ざかったが、29年ぶりに姿を見せることになった。今回は智弁和歌山が早々に姿を消したというラッキーもあったが、それ以上に話題になっているのは、1979年に同校を全国制覇に導いた名監督、故・尾藤公氏の長男・強氏が現監督を務めており、親子二代で甲子園制覇の夢に挑戦するという背景もある。ユニフォームのデザインは29年前とまったく同じ。親子だから当然だが、監督の風貌や雰囲気も強かった当時とそっくりだ。箕島高は優勝した79年、3回戦で石川・星稜高と延長18回の死闘を演じた甲子園史に残るチーム。その古豪が甲子園に戻ってくるということで、オールドファンは注目しているのである。