溶け始めた金融政策と
国債管理政策の境界

 世界最大の政府債務を受け、日本では財政再建が不可避となっている。しかし、人口の高齢化(=社会保障関係費の増加要因、直接税の低迷要因)に社会インフラの高齢化(=公共投資の増加要因)が加わることで、東日本大震災以降の財政再建は一段と難しい局面に入っている。

 こうしたなか、最終的には財政再建が求められるとはいえ、市場の観点からは、まずは制御不能な長期金利の上昇(イールドカーブのベアスティープ化)を避ける国債管理政策が問われる。

 膨大な財政赤字にかかわらず、これまで長期金利が安定してきたことから、一見、国債管理政策は奏功してきた印象を持つ。しかし、その実態はこれまでは①企業を中心とする国内貯蓄余剰(=経常収支黒字)、②貸出から国債投資に軸を移した銀行行動などを背景とする「ソフトバジェット問題」(注1)であった。

 しかし、ここに来て、より直接的な国債価格維持策としての色合いを強めてきたのが金融政策だ。2013年4月4日に日銀が採択した「量的・質的金融緩和」(Quantitative and Qualitative Monetary Easing:以下QQE)がそれに当たる。金融政策と国債管理政策の境界が溶け始めている。

注1:「ソフトバジェット問題」とは、財務状況が悪化しても貸し手が安定して融資してくれる可能性があるとき、借り手が過剰なリスクをとったり、すべき努力をしなくなるといった経済非効率(モラルハザード)が生じる現象を指す。つまり安定した貸し手の存在が、かえって借り手の行動を非効率にさせる可能性を表す。