株式レポート
8月5日 18時0分
マネックス証券

8月末の日経平均株価予想 - 広木隆「ストラテジーレポート」

7月末はツキがなかった
7月の日経平均ダービーは惨敗だった。読者からの投稿で、「これだけ大外しなのだから、見苦しい言い訳などせずに素直に謝れ」というコメントがあったが、きっぱりとお断り申し上げる。なぜなら、まったく「外した」などとは思っていないからである。

僕が出した予想値は1万4,800円。それに対して7月末の日経平均は1万3,668 円。1000 円以上も差がある。日経平均ダービー参加プロのなかでは最下位だ。これで「外した」と思っていない、というのはずいぶんと面の皮が厚い言い分ではないかと思われても仕方ない。

スティーブ・マックイーン主演の『華麗なる賭け』という映画があった。ずいぶん昔にテレビで観た。当然のように吹き替えだった。この映画のラストシーンはオリジナル(字幕版)と吹き替え版では台詞が異なる。吹き替え版の台詞はこうだ。

<賭けには勝ったが、愛には負けた>

これは、まさに僕の50年の人生を、一言で言い表す台詞である。これまで何度か修羅場とも言える局面で、賭けのような勝負をしてきた。その結果、今がある。こうして、ここに立っている。賭けに勝ったからこそ立っていられるのだ。しかし、賭けの代償として失ったものや手に入れられなかったものも、また多くある。何かを選択するとは、選ばなかったほうを諦めるということにほかならない。

さて、7月の日経平均ダービーの結果について、自分なりに総括すれば、

<ゲームには負けたが、相場では負けてない>

月末の日経平均の値をピンポイントで予想するというゲームには負けたが、それと相場観の良し悪しとは直接関係がない。さらに言えば、月末の株価を当てることと投資の成績は別物である。予想は当たったり外れたり。予想外の値動きになったとき、どう立ち振る舞うかが投資の成績を決めるのだ。それが相場での腕の見せ所である。それに対して、月末の値を当てるのは、半分以上、運やツキの要素によると思う。
以前にも紹介した、プロポーカー師の木原直哉さん。 「運がいい時も悪い時もある。誰でもそこまではわかるけど、運を良くしたりとか、運がいい時を持続させたりなどは、人間には不可能だと思うのです。だから、運がなくて負けたことについては悔しくはありません。残念だ、仕方がないなと思うだけです。ただ、いつでもミスプレーはいくつもあるわけで、ミスプレーをしたことに対しては悔しいと思いますし、次にプレーするときはそれを減らそうと考えるのです」(『運と実力の間』)

北方謙三の小説『望郷の道』の中で、主人公の妻、瑠偉が賭場で博奕を打つ場面がある。
<七度目、瑠偉は丁目に張った。十円である。いまの自分にとっては少なくない額だが、それも頭から拭い去った。三度、丁目に張り続け、三十円が消えた。

動揺してはいなかった。流れが来ている。それをはっきりと感じる。勘とも言えるし、博奕の血とも言える。四度目。なんの躊躇もなく、半目に張った。二十円である。負けることは考えていなかった。

四十円になった。八十円になった。百六十円になった。(中略) 瑠偉の前に、駒が山積みになる。負けの波が二度来て、五十円ずつで凌いだ。それからまた百円を張った。
気づくと、四百円を超えていた>

明治時代の話である。消費バスケットの比較が難しいので当時の1円が今のいくらかに相当するかは定かではないが、大雑把に言って当時の1円は今の1万円くらいの価値があっただろう。だから瑠偉が賭けていたワンショットは10万円だと思えばいい。10万円から始めて100万円単位の勝負に移り、最後は400万円勝ってやめたというところだ。

博奕とは言え、相場を張るうえで参考になるところが多くある。流れを読むこと。基本的な流れさえつかめていれば、負けても動じないこと。流れのなかで負けの波がくることがあるが、そこを軽傷で凌ぐこと。これはポーカーにしろ、丁半博奕にしろ、そして株式投資にしてもすべて相通じるところだと思う。

僕は常々、相場の基本的なトレンドを見極めることが大切と述べてきた。そして、短期的な相場の変動 ― フラクチュエーションとか「綾」のようなもの ― は予想したり、捉えることができないのだから、そんなところまでは追いかけてはいけない、と言ってきた。

日経平均は7月18日に1万4,808円で引けた。僕は心の中で、「早過ぎるよ!2週間早いよ!」と叫んだ。それでも相場は高値を保った。25日までは1万4,500円を超えていた。その後、26日、29日の2日間で900円の下げとなる。ところが8月に入ると2日で800円埋め戻す。結局、月末にかけて一時的に下振れしただけだ。日経平均ダービーというゲームは月末値を当てるゲームだから、たまたまそこに相場の綾が重なった。ツイてない、と思うだけで、木原さんと同じく、悔しいとは思わない。だって基本的な相場展開は僕の読んだシナリオ通りだからだ。

負けの波を凌ぐ
今回、これだけ大外れでも僕が「相場では負けてない」と強気を崩さないのは、二つポイントがある。ひとつは「負けの波を凌いだ」ことである。マーケットは気紛れで不安定なものだ。相場の予想は当たったり外れたりする。相場の予想を勝負に喩えれば、予想が外れれば負けである。問題は、そうした「負けの波」が来ているときの振る舞い方である。

こんなときに最悪なのはすぐに弱気に曲がること、日和って意見を変えることだ。弱気材料はいくらでもあった。「中国のシャドーバンキングが大問題になる」「新興国の景気減速が深刻」「日本企業の業績も期待外れ」「米国の量的緩和縮小も遠のきドル安=円高懸念がある」など実際にメディアには市場関係者の慎重論が多く掲載された。

それに対して僕がとった行動は真逆。あくまでも強気を貫き通した。日経平均が400円超の急落となった7月26日付けのレポートでは、好業績の自動車各社の決算発表を機に企業業績に対する見方も好転してくるのではないかと述べた。<日本株相場が企業業績失望懸念と円高が材料で売られたとするなら、来週は戻りを試す展開となるだろう>とも書いている。
翌週月曜日、29日も日経平均は続落。468円も下げて安値引けとなった。その日にもフォローアップのレポートを出し、ドル円の次の下値目処は97円60銭とした。果たしてドル円の安値は97円59銭で止まった。そのレポートでも、<自動車など好業績の確信度が高い企業群の決算発表を目にすれば、相場の下値は固まってくる>と繰り返した。29日の急落を受けた翌日のマーケットメール朝刊には<日本株相場は売られ過ぎの領域に入っている>とのコメントを寄せた。その後の市場の急反発は既に触れた通りである。

業績予想の上方修正でレンジが切り上がる
もうひとつのポイントは決算発表が進むにつれて業績予想が上方修正されていることである。前回のレポートでは、<4-6月の日経平均は今期予想EPS900円をもとにPER14倍から17倍のレンジで動いた。7-9月は990円に上方修正されるEPSをもとにした新たなバリュエーション・レンジでの推移となるだろう>と述べた。今期予想EPSが990円に上方修正されることを決めつけたような言い方だが、クィック・コンセンサスのEPSは実際のところ先週末時点で962円まで上方修正が進んでいる。決算発表はまだ月の半ばまで続く。決算が全部出揃う頃にはおそらく990円程度に達しているだろう。

クィック・コンセンサス以外の集計も確認しておこう。グラフ1はIFISジャパン集計によるリビジョンインデックスであるが、前期の決算発表時以降、低下傾向にあったリビジョンが直近では底を打ち、再度上昇に転じているのが確認できるだろう。こうしたリビジョン・モメンタムの底打ち〜反転上昇が背景にある以上、株式市場の下値はファンダメンタルズ面でサポートされる。



保守的に、現在確認できる予想EPS962円を基に考えれば、先週末の日経平均終値1万4,661円はPER15倍で(1万4,466円÷962円 = 15倍)、バリュエーションとしては極めてフェア(適正)と考えられる。例えば、S&P500のPERはトムソン・ロイターのデータを基にすると先週末時点で14.7倍である。S&P500のPERは向こう4四半期の利益、つまり1年先までの利益が基になっている。日経平均も今期、来期の予想利益を按分してPERを算出すると14.3倍まで下がる。日米ともPERで測ったバリュエーションはほぼ同水準だ。

(一部の機関投資家も含め)多くの投資家が参照しているであろう、日経新聞に掲載されるPERは未だに16倍である。ここから逆算すると、日経予想を基にしたEPSは 900円のままで、市場のアナリストによる上方修正はまったく反映されていない。

僕が犯したミスプレーはこの点だったかもしれない。市場参加者の多くは7月末でもまだ予想EPS 900円を基準にバリュエーションを測っていたのだろう。

4 月末 13,860円
5 月末 13,774円
6 月末 13.677円
そして
7 月末 13,668円
以前から述べているように、日経平均の月末値は1万3,000円台後半に収斂している。EPS 900円とすればPER15倍台前半。それが市場の落ち着きどころだった。

だから8月末の日経平均株価予想は、1万4,800円で出した。そう、前回7月末の予想として出した値とまったく同じだ。リベンジの意味もあるが、感情に流されては相場は勝てない。もう説明は不要だろう。8月末になれば今度こそ予想EPS 990円が見えてくる。それに賭けたのだ。PER15倍が市場の落ち着きどころなら、落ち着くところに落ち着くはずである。

僕の最大のライバル、福山雅治が演じるドラマ『ガリレオ』がやっと終わってくれたと思って一息ついていたところに、また強敵が出現した。日曜劇場『半沢直樹』の堺雅人である。映画『鍵泥棒のメソッド』では広末涼子と共演し、今度は上戸彩が奥さん役である。羨ましいにもほどがある。しかし、いちばん悔しいのは、そこではない。半沢直樹の決めゼリフを僕が言えないところが悔しいのである。彼の決め台詞はこうだ。

<やられたら、やり返す。倍返しだ!>

僕が出した8月末の日経平均株価予想1万4,800円は、倍返しどころか7月末予想とまったく同じ。7月の月中高値(終値ベース)に並ぶだけだ。そこが悔しいところである。

しかし、8月中は難しいかもしれないが、この秋以降は、この台詞で決めさせてもらう局面が来るだろう。特に9月にかけてはイベントも多く、波乱含みの展開を予想している。相場は一旦、下値を探る局面があるかもしれない。だが、結局、次回4-9月期決算で買い直される展開となるだろう。その時は思い切り言います。下げ幅の倍返しだ!と。乞うご期待。


(チーフ・ストラテジスト 広木 隆)

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