社会へ長期投資するという考え方

 経営者は一度改めて考えてみるべきでしょうね。最近はCSRという言葉が独り歩きしている感じが否めないので、わが社にとってのCSRとは何ぞやという各論を追求すべきです。自分たちが社会的責任を果たさなければいけない、その対象は何なのか。そして、その対象に対して何を果たしたら自社のCSRと言えるのかをしっかり定義づけするべきです。

渋澤 CSRというのは、その会社のやり方ではなくあり方だと思うんです。そう考えると、その企業が一番大切にしているものは何だということがCSRに表現される。これがトップマネジメントの問題だとか、CSR部の仕事ですということでは会社に浸透しません。社内に浸透しないものが社会に浸透するわけがないので、社員が個々にCSRを意識下にまで落とし込むことが重要かなと。

 CSRって、要は長期投資なんですよ。投資と聞くと儲かる儲からないの話と思われるかもしれませんが、そうではなくて、未来とのキャッチボールです。リターンのない投資なんて本来はありえないのですが、投資という言葉にはどうも「マネーゲーム」、つまり、投げっぱなしというような印象を持つ日本人が少なくありません。

 自分が生きている間には何も変わらないかもしれないけれども、次世代に何か残したい、次世代にいい社会を残し、企業もそのような環境で持続的に繁栄する可能性が高まるから投資するわけです。投資資金として、現時点の富や想いを循環するというのはそういうことですし、CSRが持つ本来の意味はそこにあると思います。

企業と人、そして社会<br />長期投資という考え方が<br />これからの日本を変えていくCSRとは長期投資。企業活動とはつまり、次世代へどれだけよい社会を残せるかにかかっている。

 投資とはノックアウトではなくて、ボディブローですよね。継続的にボディブローを打ち続けてじわじわと結果を出していくという。だから、そういう会社は事業だけでなく人にちゃんと投資しています。後継者を育てて、自分たちの仕事を次世代に残す準備をしていますよね。

渋澤 そうですね。われわれ金融機関の存在意義は、資本の循環をサポートすることだと思います。家計と企業間もそうですし、現在から未来へという世代間へも循環させる。その役割を果たすことができたら、それがわれわれのCSRになるのではと考えています。

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 50年以上に及ぶビジネスマン経験を経てもなお第一線で活躍し続ける伝説の外資系トップ・新将命氏と、さまざまなジャンルのロールモデルとなり邁進するリーダーたち。その共通の願いは、仕事を通して未来をもっとすばらしいものにしたいというものでした。そしてその願いは、新氏が経営の原理原則として最も重要視しているクレード(理念)へと重なる……。クレードが日本を、ひいては世界を変えていくのだと改めて確信できる対談となりました。

(了)


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