「全身が痙攣して嘔吐とめまいを繰り返しました。死ぬかと思って本当に恐ろしかった・・・・・・」

 2008年1月30日に発生し、日本中を恐怖の渦に巻き込んだ「中国製冷凍餃子(ギョウザ)中毒事件」を覚えているだろうか?

 ことの発端は、中国の河北省にある天洋食品が製造した冷凍餃子だった。同社製の餃子を食べた千葉県と兵庫県在住の日本人10人が食中毒となり、製品から有機リン系殺虫剤のメタミドホスが検出されたのである。あの騒動からちょうど1年が経つ。

 当時、日中両国は異例の協力体制で捜査を行なったが、日本側は「日本で毒物が混入された可能性は非常に低い」(警察庁幹部)と発表。中国側も意図的な混入を否定し、事件は解決しないまま暗礁に乗り上げていた。

 そんななか、最近びっくり仰天するような話が飛び込んできた。国営新華社通信によると、今月24日、天洋食品が回収・保管していた売れ残った大量の餃子を、地元政府の斡旋で同省内の鉄鋼工場などに横流しし、なんと中国で新たな中毒事件を引き起こしていたことが判明したのだ。

 報道によると、冷凍餃子中毒事件の当事者である天洋食品は、事件後に製品を日本に輸出できなくなり、経営が悪化していたという。そこで、河北省の国有企業を監督する政府部門「国有資産監督管理委員会」が、天洋食品を救済するため、同委員会の監督下にある大型国有企業「河北鋼鉄集団」に餃子を買い上げさせ、傘下の鉄鋼工場に無料配布させていたというのだ。

 配られた餃子を食べた複数の従業員が、下痢や嘔吐などの中毒症状を訴えていたこともわかった。

自国内で「冷凍餃子中毒事件」が再発!
中国の食品衛生は改善の余地なしか

 いったい、なぜ再びこんなことが起きてしまったのか?

 その理由は、事件の責任がうやむやにされた状態が長く続いたため、中国市民の危機感が低下していたことに他ならないだろう。

 第一に、日本の中毒事件は中国でも報道されたものの、中国公安省が昨年2月の記者会見で中国国内での毒物混入を全面否定した。その結果、中国では「日本での混入説」が既成事実化していたフシがある。

 第二に、多くの中国メディアが「天洋食品の安全管理に問題はなかった」として、同社をあたかも“被害者”のように報じ、同情が集まっていたことも挙げられる。それが「中国で売れ残っている餃子は安全だ」という認識に結びつき、無料配布につながったのではないかと考えられる。