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東京理科大学専門職大学院イノベーションレビュー

なぜアップルとサムスンは訴訟闘争を続けるのか?

ニュースで学ぶ知的財産権戦略入門
東京理科大学専門職大学院MIP(知的財産戦略専攻)

【LECTURE Theater 2013 第1回】 2013年8月20日
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IT業界を中心に、知的財産権をめぐる訴訟闘争が相次いでいる。知的財産の戦略的な利用と防御は、もはや企業規模を問わない課題である。その探求を一方の軸とする東京理科大学専門職大学院の教育陣が知的財産の現代的な課題を講義する【LECTURE Theater 2013 第1回】は、アメリカにおける知的財産とイノベーションの関係について平塚三好教授に聞いた。

マイクロソフト、アップル、サムスン、グーグルの
熾烈な訴訟闘争のゆくえ

 マイクロソフト、アップル、サムスン、グーグル。世界のITをリードする4社は現在、それぞれの特許侵害を問うし烈な訴訟闘争を繰り広げています。特にデジタルモバイル端末(スマホやタブレット端末)の技術に絡み、それぞれが他の3社との訴訟を抱える“四つ巴”の状況が出現しています。

 裁判所や特許当局などの判断は、訴訟地や訴訟内容でさまざまに分かれています。例えばアップルがサムスンを被告に日本で提訴したスマホ関連の特許侵害訴訟では、東京地裁はタッチ操作についてアップルの訴えを認めましたが、知的財産高裁は音楽データの共有技術について「特許侵害なし」とサムスンの侵害を否定しています。

東京理科大学専門職大学院
知的財産戦略専攻 教授
工学博士
平塚三好(ひらつか・みつよし)
東京理科大学大学院理学研究科物理学専攻修士課程修了。米国フランクリン・ピアース・ロー・センター知的財産修士(US MIP)課程修了。国内特許事務所( 米国に駐在してMIP を取得後、いくつか法律事務所で実務経験を経て復職)、及び東京理科大学知的財産本部知財マネージャーを経て現職。著書に、『東京理科大学・坊ちゃん選書「もの」から「知財」の時代へ』、論文に、「Androidライセンスと知財問題の解説」(『知財管理』平成24年6月、共著)、「情報通信・エレクトロニクス産業の発展を阻害するパテントトロールへの対応策」(日本経営工学会論文誌平成21年8月)などがある。

 また逆に、サムスンがヨーロッパ各国でアップルを被告に訴えた裁判では、EU特許当局の基本的な判断基準が示されるのを見透かしたように、サムスンがすべての提訴を取り下げるという驚きの決断をしました。政策当局の動きも絡み、訴訟闘争の戦術も複雑さを増しているのです。

 そもそも「オープンソース」という言葉に象徴されるように、「優れた物はシェアをすればよい」という牧歌的ともいえる思想を持っていたIT業界が、このような特許関連の訴訟を多発するようになったのはなぜなのでしょうか。

 1990年代の後半までは、マイクロソフトもアップルも特許などの知的財産権に対する関心は低く、個人発明家の発想の域を出ていませんでした。ところがその後のITバブルを契機に、状況が急変します。バブル過程で、各種の特許侵害の攻撃を受けるようになり、それへの反攻を準備しなければ、事業そのものが危機に瀕する事態が出現したのです。知的財産権を武器にしていかなければ勝ち残れない。そのことに、IT企業は目覚めたのでした。

 その目覚めは、IT各社の特許取得数に端的に表れています。米国知的財産権者協会(IPO)は、30年前から、米国特許取得企業トップ300社をまとめています。サムスンは電気メーカーであるがゆえに、2012年も6年連続で2位になるなど、特許取得数は上位にありました。しかし他の3社の2005年と2012年の取得数を比べてみると、マイクロソフトは750→2,704(19位→7位)、アップルは85→1,136(184位→24位)、そしてグーグルは2005年にはランキング入りしていないにもかかわらず、2012年には1,151で23位とアップルを上回っています。

 ユーザーの感性により強く訴える技術が駆使されるスマホの出現によって、知的財産権重視の傾向は、より鮮明になります。例えばユーザーインターフェースの意匠性を重視するアップルは、デスクトップに表示されるカレンダーやメモ、設定などのアイコンなどについてデザイン・パテント(意匠権)とトレードマーク(商標権)の両方で権利化しているほどです。

 これらにオペレーティング・システム(OS)のシェア争いが絡み合い、アップルとサムスンのように、部品供給で取引先関係にあるのに世界中で訴訟闘争を繰り広げる敵対関係でもあるという複雑な様相が生まれました。
 

 

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いかにして技術から新しい価値を生み出すのか。また、その成果をいかに正当に確保し、配分するのか。東京理科大学専門職大学院のMOT(技術経営専攻)とMIP(知的財産戦略専攻)には、教員・院生を問わず多様な人材が集い、現実の課題に基づく視点から、イノベーションを実現するための叡智が日々蓄積されている。

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