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今泉今右衛門
色鍋島の品格と拡張を今に表現する

週刊ダイヤモンド編集部
【第43回】 2008年8月29日
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今泉今右衛門
写真 加藤昌人

 柚灰(ゆすばい)を加えた釉薬(ゆうやく)が生み出す、かすかに青みがかった白の肌を、青、赤、緑、黄の草花文様が彩る。色鍋島は江戸時代、鍋島藩が献上品や城内用品に限って作らせた。その色絵付けを下命されたのが最も技に秀でた今泉今右衛門家だった。明治時代に藩の保護を失うと、本窯も手がけるが思うままにならず、家財道具一切を売り払う苦節を乗り越え、一子相伝の秘法を伝え継いだ。

 「伝統は相続できない」と、後に人間国宝に認定された父、13代は、これまで色鍋島にほとんど使われたことのない薄墨色の絵具を吹き付けるなど、斬新な作風を確立した。「400年前にそうしたように、今に受け入れられる新しい仕事をせよと、父は身をもって教えてくれた」。

 墨が絵具をはじくことを利用して白い文様を描く墨はじきは、14代の代表的技法となった。色のない部分にも目を凝らすと異なる文様が青白く浮かび上がる。「目立たないところに、神経と手間を惜しまない、それが色鍋島の高い品格と格調を支えている」。大学時代に学んだ金工やプロダクトデザインを応用し文様にプラチナを埋め込んだりもした。冷たい金属は陶器になじみ、周りの色を取り込み、別の趣を醸し出す。

 14代の重責に思い悩む日々もあった。仕事場帰りに見る堂々とした母屋に、「作品という手本を残した代々のありがたさがこみ上げた」。「現代美術は価値観を創るもの。工芸は毎日の積み重ねで見つけるもの」。今日も母屋を後にする。

(『週刊ダイヤモンド』副編集長 遠藤典子)

今泉今右衛門(Imaemon Imaizumi)●陶芸家。1962年生まれ。武蔵野美術大学工芸工業デザイン学科(金工専攻)卒業。インテリア会社を経て、1990年から家業に従事、2002年14代今泉今右衛門襲名。日本伝統工芸展 東京都知事賞など受賞多数。

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