最後の大規模な公開演奏会だった「クリスマス・コンサート」(新宿文化センター)の4ヵ月前、2004年8月15日、大阪のコンサート会場でWild Catsのドラムス、飯田三千さんが本田美奈子さんの控室をたずねた。15年ぶりの再会だった。飯田さんが語るロックバンドWild Catsの日々。

大阪で15年ぶりの再会

ロック歌手・本田美奈子さんとの2年間を語る<br />Wild Catsのドラムス飯田三千さん(1988-89年)アルバム「豹的(TARGET)」のジャケット見開き。下のジャケット写真5人の中央が飯田三千さん(1989)

 大阪WTCコスモタワーで行なわれた「本田美奈子コンサート」の様子を本田美奈子さんはファンクラブの会報にこう書いている。

 「(略)久しぶりにマリリン、Sosotteなど、ポップス系の歌をうたって、私自身メチャ楽しくあっという間のステージでした。ずーっと歌っていたかった。(略)それにビックリした事があったんだ!! Minako With Wild Catsのメンバーと再会出来たの!!」(本田美奈子「Blue Spring Club」2004年9月号)。

 ここまでは連載第28回で紹介した。本田さんの文章はこのあとこう続く。

「誰だと思う? それはドラムのCOCO(飯田三千)でーす。突然、子どもを連れて楽屋に来てくれたの!! 1回目のステージを見てくれたんだって!! 今は大阪で主婦してるって言ってました。久し振りの再会で本当に嬉しかった」(本田美奈子「Blue Spring Club」2004年9月号)。

 飯田三千さんは本田さんのコンサートが大阪であることを知り、その日1回目の本番終了後、WTCの控室のそばまで行ってみた。小学校へ上がる前の男の子を連れていた。係員に「もし会えるなら…」と伝えてもらったところ、「はあい、ミチー!」と言いながら本田さんが現れた。89年後半に別れて以来、15年ぶりの再会だった。

 本田さんは「ミチーが来るなら『あなたと、熱帯』を歌ったのにぃ」と飯田さんに話した。

 2004年夏といえば、ミュージカルに出演する一方、ソプラノ・リサイタルが増えていた時期だ。飯田さんもそのような様子は知っている。

 「もうWild Catsは歌わないと思っていました。意外でしたねえ」(飯田三千さん)

 この日はポップスもたくさん歌っている。Wild Catsのオリジナルは歌っていないが、本田さんの持ち歌であるロック系の「CRAZY NIGHTS」と「孤独なハリケーン」はプログラムに入っていた。Wild Catsでもよく歌っていた曲である。「孤独なハリケーン」はWild Catsオーディションの課題曲でもあった。