迫る「重要な決断」

 民主党政権時代、自民・公明・民主の三党合意で、消費税率を引き上げることが決まった。来年(2014年)4月に8%、そして再来年(2015年)10月には10%に税率を引き上げるという内容だ。ただ、経済動向によっては、消費税引き上げのタイミングを遅らせる可能性もあると法案には盛り込まれている。

 安倍総理は、消費税率を来年4月に予定どおり引き上げるか、それとも先送りあるいはより小刻みな引き上げという修正をするか、今秋には決断するとしており、大きな注目が集まっている。

 安倍総理の懸念はよくわかる。安倍内閣の経済政策の基本は、まずデフレからの早期脱却を目指すことである。消費税率の引き上げによってデフレ脱却の流れに逆行してしまえば、内閣の経済政策は根本から揺らぐことになる。

 ただ、多くの市場関係者が指摘しているように、消費税率の引き上げを遅らせることにも大きなリスクが伴う。市場関係者は、安倍内閣の財政健全化への姿勢に注目している。もしその姿勢が弱いものであると見れば、国債を売りに出ることが懸念される。

 大胆な金融政策ということで、日本銀行は膨大な長期国債の購入を続けている。これはデフレ脱却には有効な政策だが、日本銀行が国債を多く購入するほど、市場はその先にある政府の財政運営の姿勢により厳しい視線を送る。

 もし、市場で国債が売り浴びせられるようなことがあれば、経済がたいへんな事態に陥ることは言うまでもない。幸い、これまでのところ、長期金利には大きな変化は見られない。

 これをどう解釈するのかは難しい。「市場は、最終的には安倍総理が消費税率引き上げに動くと見ているから、長期金利が動かない」というのが一つの解釈である。もう一つの解釈は「消費税率の引き上げを当面先送りしたからといって、すぐに国債の売りには結びつかないだろう」というものである。どちらが正しいかはわからない。

「橋本内閣」の時とは、何が違うか

 消費税の引き上げに慎重な意見を表明する人は、よく1990年代後半の橋本内閣時の経験を引き合いに出す。あのときは消費税率を3%から5%に引き上げた。その後、日本経済の景気は急速に悪化し、自民党は選挙で大敗し、橋本内閣の退陣につながった。

 だが、消費税率引き上げが当時の日本の景気失速の原因であるという見方には異論も多い。特に大きな論点となるのが、この時期、日本経済全体がバブル崩壊後の深刻なバランスシート調整問題を抱えていたことだ。金融機関は膨大な不良債権を抱えていたし、企業も過剰債務で苦しんでいた。