現状の電力システム改革案は
低廉安定供給の継続に資するか?

 去る8月2日、経済産業省・総合資源エネルギー調査会が“電力システム改革”の詳細を決める第1回制度設計ワーキンググループを開催した。

 制度設計の根拠になる電気事業法変更案は、先の通常国会の会期末での政治的混乱の中で廃案となった。しかし、政府は4月2日に“電力システムに関する改革方針”を閣議決定しており、これを拠り所としてこのWGを開始させた。安倍政権は、秋の臨時国会で速やかにこの法案を提出する意向であるようで、そうなれば同法案はあっさり成立するであろう。

 “電力システム改革”による制度変更案とは、以下の3点を段階的に行うことを企図している。

(1)広域的運営推進機関の設立:2015年を目途
(2)電気事業参入の全面自由化(現在規制されている家庭用を中心とする低圧需要向け小売への新規参入解禁):2016年を目途
(3)電力会社の発送電分離(法人分離)と電気料金規制の撤廃:2018~2020年を目途

 私は、これらの段階的な制度変更案うち、(2)と(3)については電力行政の根幹である「低廉安定供給の継続」に資する要素が全く感じられないため、強く反対する。

 この制度変更案の検討の場であった“電力システム改革専門委員会”の委員長は伊藤元重・東京大学大学院経済学研究科教授であったが、同教授が4月にダイヤモンド・オンライン上で公開した「日本の電力システムを創造的に破壊すべき3つの理由」()と題する論考を拝読するに、このような認識の下で制度変更案を検討すればこのようになるのも「さもありなん」と思わざるを得ないものであった。