8月6日、社会保障制度改革国民会議(以下、国民会議)は、「確かな社会保障を将来世代に伝えるための道筋」という副題を付した報告書(以下、報告書)をまとめて公表した。決して分厚いものではないので、読者の皆さんも、ぜひ自分の目で一読してほしい。

 ところで、報告書は、一体何を提言しているのだろうか。報告書は、大きく4つのパートに分かれている。「社会保障制度改革の全体像」「少子化対策分野の改革」「医療・介護分野の改革」「年金分野の改革」である。では、パート毎にその内容を見て行こう。

1970年代モデルから
2025年モデルへ

「社会保障制度改革の全体像」は、次のように述べる。わが国の社会保障の枠組みが固まった1973年のモデルは、「正規雇用・終身雇用の男性労働者の夫と専業主婦の妻と子ども」という核家族を前提に「現役世代は雇用、高齢者世代は社会保障」という生活保障モデルであった。そして、この時代は約9人の現役世代が1人の高齢者を支えていたのである。この70年代モデルが既に破綻して久しいことは、誰の目にも明らかである。現在のわが国では、カップルと子ども2人という「標準世帯」は全世帯の3割を切っており、かつ、現役世代約3人が1人の高齢者を(しかも平均余命の延伸により、70年代の約3倍という長期間にわたって)支えなければならなくなっているからだ。

 そうであれば、「給付は高齢者世代中心、負担は現役世代中心」という従来の発想を転換して、「給付も負担も全世代で」という報告書の指摘は全くもって当然という他はない。そして全世代型に切り替えるのであれば、負担については「年齢別」から「負担能力別」に切り替えることもまた、論理必然的に当然の帰結ということになる。これには、誰しも異論を唱える訳にはいくまい。

 また、国民会議は、消費増税という国民負担を社会保障制度改革の実施という形で速やかに還元するため、短期に改革・実施すべき事項と、団塊世代がすべて75才以上となる2025年を念頭に置いて段階的に実施すべき中期期の事項を分けて考えるべきだと指摘している。妥当な考え方であろう。なお、報告書は、改革をフォローアップするための体制確保を政府に求めているが、それならいっそのこと、国民会議をこのまま存置して、毎年度末にフォローアップ報告書を内閣に提示するように仕組み化してはどうか。