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8月14日 18時0分
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長期分散投資の復活〜日本株とドル円の連動性〜 - 村上尚己「エコノミックレポート」

マーケットでは、「リスク回避(リスクオフ)の円高」という、もっともらしい相場解説がたびたび行われる。メディアに登場するコメントを眺めると、「日本株(あるいは米国株)が上昇すれば(しそうだから)、円安になる(なるだろう)」、という型にはまったコメントが多い。反対に、株が下がれば(リスクオフ)となれば円高となる。ドル円の動きが為替市場独自の要因よりも、株式・米債券市場を理由に見通しが語られる。

一方、日本の株式市場では、円安が進むと株価が上がる、という説明もされる。これは、円安が進んだ分輸出企業を中心に日本企業の業績全体が改善する、というファンダメンタルズに基づいた、強固な関係である。

前者の為替市場の解説は曖昧だが、後者の株式市場における解説は明確な因果関係がある、と筆者は考えている。それはともかく、実際に日本株とドル円の連動性が強いことは確かである。2005年以降、両者はかなり連動している。2012年末以降のアベノミクス相場でも、超円高の修正と大幅な株高が同時に始まりほぼ連動していた(グラフ参照)。


両者の連動性がこれほど強かったのは、二つの因果関係が相互に影響していたためだろう。先に示した「曖昧な」為替市場の理屈も、働いていたということである。筆者は、このメカニズムについて、6月14日レポート「質への逃避による円高の正体」で取り上げた。日本株が下落してそれで円高が進む本当の理由は、株価下落が起きると、景気停滞・デフレ圧力が高まることが予想され、デフレ期待(通貨価値の上昇期待)が円高をもたらす、というメカニズムがあるからだ。反対に、日本株が大きく上昇し、デフレが和らぐという予想が浮上すると、デフレ期待が和らぎ円高が修正されるわけである。

そして、日本だけが、この深刻な株安⇔円高の悪循環に長年に渡り陥っていたのはなぜか。それは、「金融政策が機能不全に陥る」「日銀がデフレを許容(orに誘導)する」という、日本銀行の政策姿勢である。他国の様なインフレを目指す金融政策が実現しないという、強固な投資家の期待が市場に蔓延していたことが、この異常な状況の最大の要因だった。

筆者は、長年にわたる日本株と為替市場の連動性をこのように理解している。一方で、2013年になり、黒田総裁誕生を機会に、日本銀行は2%インフレを実現させる通常の中央銀行に生まれ変わった、とも考えている。

デフレを許容(に誘導)する日本銀行が生まれ変わり、2%インフレ実現を目指して金融緩和強化を続けると、市場参加者が予想すればどうなるか?為替市場では以下のような思惑が浮上する。仮に株安が起きても、その結果日銀が、米国よりも強力な金融緩和に踏み出し、インフレへの正常化を目指す(米FRBは量的金融緩和縮小に動いている)。であれば、日本と米国の金融政策のスタンスの差が、「円安ドル高」要因になるメカニズムが働く。

筆者は、アベノミクスによって、金融市場はこのような環境に変わりつつあると考えている。未だに、「リスクオフで円高」などと説明される値動きが起きるのは、長年にわたる日本株とドル円の連動性を経験則として、それを信奉している市場参加者がまだ多いからだろう。ただ、それも少しずつ薄れていくと考えている。

つまり、日本銀行がインフレへの正常化をちゃんと目指して、普通の中央銀行として政策を行うということは、日本の株式と為替市場の関係を根本から変えることになるわけだ。そして、この変化は、個人投資家の資産運用にも大きな影響を及ぼす。

具体的には、日本株とドル円の連動性が崩れ、株安となっても円安が進む状況になれば、リスク資産としての日本株と外貨建資産において分散効果が働くことになる。アベノミクスによる、日銀の政策転換そしてインフレ経済への転化によって、個人投資家による長期分散投資がワークするようになる。つまり、デフレと日銀の大失政でこれまで機能しなかった、長期分散投資がこれから復活するということである。




(チーフ・エコノミスト 村上尚己)

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(マネックス証券)


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