「支払い条件の見直しと それに伴う支払手段の変更のお願い」。7月上旬、パナソニックは取引のある主な資材メーカーの担当者らをいっせいに集めて、今秋から購入代金の支払期限を30日間延長してほしいと要請した。大阪で開かれた説明会に出席した関係者の手元には、そんなタイトルがつけられた計11枚のスライド資料が配られた。

 直接的な表現はないが、趣旨は明快だ。同社は2年連続で累計約1.5兆円の赤字という“大穴”を開けたため、経営に充てるキャッシュが逼迫。改善に向けて取引先も負担を分け合ってくれというものだ。

“大親分”の必死の資金改善策 <br />パナソニックが支払い延長へパナソニックが取引先に配った説明資料。“家電の巨人”はキャッシュ創出に必死だ
Photo by Naoyoshi Goto

 2006年には借金を差し引いても1兆円を超える現金を保有していたが、プラズマテレビ工場への巨額投資や、パナソニック電工や三洋電機の完全子会社化で借金が激増。今春までに約2兆円の資金が“蒸発”してしまったのだ。

 その対策として、具体的には105日間(90日間+翌月15日入金)だった支払期限を、135日間と約1カ月延ばしてほしいと頭を下げたわけだ。

 これ自体は、財務体質改善のためには必要な施策に違いない。業界で話題になったのは、そのスタンスの豹変ぶりだ。

「今回の契約の見直しは、あくまで同業他社と同レベルの水準にするもの」

 その言葉通り、説明会資料では、わざわざ国内競合メーカー7社を匿名にして、それぞれの支払期限(120~150日間)を比較したグラフを作成してまで、今回の契約変更の正当性を主張した。

「これまでは“大親分”だったパナソニックが最も支払い条件がよかったが、年々悪化する業界標準をここで持ち出すとは寂しい限り」(取引先関係者)

 聞こえてくるのは、そんな感傷的な声に限らない。

「自動車業界の大手メーカーの支払期限は、平均しても30~60日間ほどで比べようもない。電機業界全体を圧迫する要因にもなるはず」(専門家)

 一部の取引先メーカーからは、契約変更に応じないと、取引が難しいと示唆されたという憤りの声すら上がっている。一方、取引先の債券流動化に役立つよう、旧来の手形取引を、電子記録債券システムに振り替える。

 まさにパナソニックは必死の形相で、今年度に約1000億円の資金創出を目指している。