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8月21日 18時0分
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長期分散投資がワークしなかった理由 - 村上尚己「エコノミックレポート」

デフレと白川日本銀行の大失政のおかげで、2012年秋口まで日本の個人投資家をとりまく投資環境は非常に厳しかった。デフレと名目経済が縮小する異常な世界では、株価は下落トレンドをたどり、金利も極めて低い水準に止まる。そして、金融政策の無作為を前提としたデフレ期待の強まりが、大幅な円高を招く。この結果、キャピタルゲインが期待できるリスク資産の価格上昇はなかなか見込めない。

もちろん、こうした異常な経済状況であっても、厳しい競争を勝ち抜く民間企業の中には、売上を伸ばして利益を増やし続ける企業も存在する。個人投資家が、こうした経済環境で長期的に金融資産を増やすには、そうした企業を選択して株式投資するのが、数少ない有力な方法になる。しかし、大多数の個人投資家にとって、そのハードルが高いのは明らかであろう。

日本のようにデフレに陥っていないほとんどの先進国では、リーマンショックのような大きな衝撃があっても、2009年以降株式市場は上昇基調を辿った。これには様々な要因があるが、何より重要なのはインフレが続き名目経済が拡大する、普通の経済環境を保ったことである(グラフ参照)。つまり、一部南欧諸国を除き米欧先進国では、正常な経済活動を守る妥当な政策が実現した。だからリーマンショック直後から、多くの個人投資家が株式などに投資をして、金融資産を再び増やしている。


ただ、日本でもようやく、異常な経済状況から抜け出す経済政策運営が2012年末から始動した。それがアベノミクスである。まだ、目標実現途上だしこれが実現するかどうかは、多くの抵抗勢力が今もなお邪魔しており不確実な面もある。ただ、インフレ・デフレを決するのは、中央銀行の金融政策であり、中央銀行が普通の政策対応を行えば、時間がかかるとしても、脱デフレと経済正常化は実現する。

個人投資家が長期的に資産運用を行う際に、まず正確に把握しなければいけないのは、以上のような経済環境である。この変化に対応して、資産運用の手法を変えなければ、金融資産を減らすだけということだ。その代表例が、深刻なデフレ不況が続く中で、「長期分散投資」を掲げてかたくなに一定のポートフォリオを決めて投資する手法である。

まず、デフレと経済縮小が続く環境では、2012年半ばまでのように、日本の株価は全体では下がり続ける。それよりは、デフレで価値が高まる「預金」で運用した方がましである。日本株に投資するのであれば、先に述べたように、デフレでも成長できる企業を選んで投資しなければいけない。

そして、経済が停滞しても、為替レートが円安となれば良いが、昨年までのように中央銀行がまともに機能せずに、デフレがずっと続く期待が強まるだけの日本においては、2009年以降のように自国通貨高が恒常的に起きる。

こうした環境だと、8月14日レポートで説明したように、日本株とドル円が綺麗に連動するので、日本株の下落リスクを分散する対象として、外貨建資産の役割は大きく低下する。リスク資産として、日本株と外貨建資産も上昇する時は同時に上がり、下がる時も一緒だからである。

もちろん10年以上のスパンでみれば、大幅な株高や通貨高が期待できる新興国に対する投資はある程度はワークするだろう。ただ、日本株下落と連動して円高が進む市場環境では、こうした新興国に対する投資においても、リスクに見合ったリターンを挙げることが難しい。数年前に日本で流行したブラジルへの投資に、リスクを取り過ぎた個人投資家も多かったのではないか。

つまり、2012年までの異常な経済・マーケット環境においては、金融資産のほとんどを預金などの流動性資産に配分することで、確実にしっかりと金融資産を増やすことができる。反対に、経済状況や経済政策運営を踏まえずに、教条的に「長期分散投資」を実践することは、金融資産をみすみす減らすという、リスクだけが高い投資方法なのである。

しかし、アベノミクスの成功によって、マクロ経済状況は劇的に変化する。それゆえに、機能しなかった長期分散投資は、これから復活すると筆者は予想している。




(チーフ・エコノミスト 村上尚己)

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