株式レポート
8月22日 18時0分
マネックス証券

米国金利上昇は市場にとって悪材料なのか - 広木隆「ストラテジーレポート」

昨日の米国株式市場でダウ平均は6日続落し、終値は前日比105ドル安の1万4897ドルと、7月3日以来、1カ月半ぶりに節目の1万5000ドルを割り込んで引けた。世界の金融市場は米国の量的緩和縮小を巡る不透明感に翻弄されていると言っていいだろう。昨日もFOMC議事要旨の解釈を巡って、株式市場は乱高下の末に下落、米国債は売られ再び長期金利は上昇した。

株式市場だけを見ると、相場はまだ落ち着かないようにも見えるが、実は徐々に安定化に向かっていると思う。それは金利上昇が素直にドル高に結びついたからだ。

朝方発表された7月の中古住宅販売件数は前月比6.5%増となり、市場予想を上回ったものの、市場の関心はFOMC議事要旨の発表に集中していたため、株式市場の反応は限定的だった。しかし債券・為替市場は金利上昇・ドル高で反応した。セオリー通りと言える。そんな当たり前のことを、なぜ殊更取り上げるのかと言えば、このところの市場の動きは金利上昇がドル高に結びつかないことが多かったからだ。米国金利の上昇は量的緩和の早期縮小に怯える市場の「恐怖感の表れ」と捉えられ、金利上昇→株価下落→リスク回避→円高という思考経路で円が買い戻される材料になってきたからである。

年初来のドル円相場と米国10年債利回りの動き(グラフ1)を見ると、年初からしばらくは円安ドル高と金利上昇が同時に起こっているが、円安ドル高の進行ペースのほうが速い(①)。これは円安ドル高が日本側の要因、すなわち「アベノミクス」期待でもたらされていたからである。事実、春先から初夏へかけて、毎年の年中行事となった米国景気の中だるみを映して米国金利が低下に向かっても円安ドル高の進行は止まらなかった(②)。今度は米国景気の立ち直りを受けて米国金利が上昇するとドル円はむしろピークアウトから調整気味の動きとなっている(③)。この間のドル円相場の要因は前述した、金利上昇→株価下落→リスク回避→円高という流れになっていたのだろうか。



ドル円相場と米国10年債利回りの動きにダウ平均を重ねて見る(グラフ2)。確かにドル円とダウ平均は連動して動いてきたが、直近では乖離している。グラフ3は直近3ヶ月間の動きにフォーカスしたものだ。ドル円が5月にピークアウトして三角保ち合いに移行しても、ダウ平均はもう一度そこから上値を取りに行き、8月初旬に過去最高値をつけている。ダウ平均が調整に入ったのはその高値をつけた後、米国長期金利がそれまでのもみ合いから放れて上昇が再加速してからである。




そうすると、金利上昇→株価下落→リスク回避というのは、ごく足元の8月に入ってからの状況を説明するには当てはまるが、すでに5月にピークアウトしていたドル円相場の動きの説明にはならない。実は、ドル円相場の動きは日本株の動きにぴたりと一致する(グラフ4)。日本株にとって為替は最大の相場材料だが、為替市場もまた日本株の動きを材料に動いてきたのであった。これでは方向感が定まらないのも無理は無い。どちらかが原因となって結果がある、というような因果関係がないからである。こういうのを循環論法という。循環論法とは、ある命題の証明において、その命題自体を仮定した議論を用いることである。例えば、なぜAか?Bだから。なぜBか?Aだから、というものだ。なぜ株が売られたのか?為替が円高に振れたから。なぜ為替が円高になったのか?株安でリスク回避姿勢が強まったから - という具合である。最近の相場の背景には、米国株相場も米国金利も登場しない。日本株とドル円のみの関係による自己循環論法と言える。無論、相場の材料はひとつではない。ドル円もいつまでも日本株の鏡写しで動くわけにはいくまい。米国の金融政策、それを反映する米国金利の動向、それらがドル円相場の短期動向を左右するというのが教科書の教えである。



それが冒頭で、金利上昇が素直にドル高に結びついたことが相場安定化へ向かう兆しではないかと述べた理由である。

そもそも米国金利上昇は量的緩和の早期縮小に怯える市場の「恐怖感の表れ」なのか?それは、端から金利上昇が悪であるとの先入観に基づいた曲解であろう。量的緩和を縮小できるのはなぜか?それは米国景気がもはやQEという非伝統的政策に頼らなくても大丈夫な状態へ回復したということの証ではないか。

金利動向を決めるのは金融政策のみではない。特に長期金利についてはそうである。経済のファンダメンタルズが長期金利を決めるのである。だから量的緩和縮小観測で長期金利が上昇するというのは、本来おかしな議論である。景気見通し・金利・金融政策というものは三位一体、同列であり、どこかを先頭にしてドミノ倒しのように決まっていくようなものではない。あえて序列をつけるなら景気の将来見通しが一番根底にあって、それに基づいて長期金利は動き、政策も議論・決定される。景気が第一で、金利と政策はそれに次いで同列である。それこそバーナンキ議長が繰り返して述べてきたことだ。

あえて断言しよう。米国金利の上昇はQE縮小懸念を反映したものではない。米国金利上昇は米国景気の回復期待が背景にある。グラフ5は代表的な景気指標であるISM製造業景況感指数と10年債利回りを表したものである。巷間、言われることと逆説的に響くかもしれないが、米国金利をここまで押し上げるくらいに米国景気が回復してきたからこそQE縮小の議論ができるのである。



そう考えると、足元で起きている米国金利の上昇が相場の重石との見方はポイントがずれているだろう。

米国金利上昇を通じたドル高が定着してくれば日本株の下値も固まってくる。今日発表された中国HSBCのPMIが市場の予想を上回り50を越えてきたことや、ユーロ圏のGDPが7四半期ぶりにプラスに転じたことなど、これまで世界景気の足を引っ張っていた地域も最悪期を脱しつつある。グローバルな景況感の改善も相場環境の好転を支えるだろう。足元では外部環境の不透明感から外需セクターを避けて内需セクターを消去法的に選好する物色動向も散見されるが、早晩、外需セクターが見直される局面がくるだろう。




(チーフ・ストラテジスト 広木 隆)

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