職務経歴書とは「面接の台本」である

 インターネットが普及する前後を比べると、転職希望者の方の職務経歴書の書き方は圧倒的に上手になりました。以前は内容が乏しく、控え目過ぎてアピールのアの字もないような職務経歴書が多かったのですが、最近はよく整理されたフォーマットが出回るようになり、きちんと自分をアピールしようとする意識も高まってきたように感じます。

 しかし全体のレベルが上がったということは、さらにもう一段レベルの高い職務経歴書を書かなければ他の人と差を付けられないということでもあります。とくに人気企業、人気職種への応募はライバルが非常に多いですから、まず書類選考をクリアできる職務経歴書を作成する必要があります。

 職務経歴書には、書類選考の材料という役割に加え、もう1つ見落とされがちな役割があります。それは面接官が行う質問のベースになる、というもので、職務経歴書はいわば「面接の台本」というべき存在なのです。したがって、職務経歴書はこの2点を意識して書かなければなりません。

 具体的な書き方としてはまず、いつ、どの会社のどの部署に所属し、どんな業務に取り組みどんな成果を残したのか、すべて客観的に記載したあらゆる職務経歴書の元となる「マスターバージョン」を作成します。次にマスターバージョンをベースにして、応募企業に合わせた「提出用バージョン」を作成します。

 たとえば自分のキャリアが営業と営業企画に大きく分かれている人の場合、応募する職種によってどちらにスポットライトを当てるかが変わってきますから、まず自分のキャリアを俯瞰するためにマスターバージョンをつくる必要があるのです。

 過去に使った手帳を眺めながら「そういえばこんな仕事もやったんだな」と書き起こしたり、プロジェクトで出した成果の正確な数字を調べ直したりしているうちに、職務経歴書に臨場感やリアリティが出て、非常にパワーのある内容になっていきます。

 別の言い方をすると、最初から完全な職務経歴書を書こうとするな、ということです。自分のキャリアとはいえ、35歳にもなれば忘れていることはたくさんあるので、下準備をしないでいきなり職務経歴書を書くと、あいまいな内容ばかりになってしまいます。それでは内容にパワーが生まれませんし、運よく書類選考を通過できたとしても、面接であいまいな部分を突っ込まれると適切な返答ができず、落とされる結果を招いてしまいます。

 このように、マスターバージョンの作成は面接でしっかり自分のキャリアを話せるようにする目的もあります。職務経歴書を作成するプロセスは、面接で話すネタの収集活動でもあると意識しておきましょう。