年初発表の12月雇用統計が弱かったため、米国金融市場でリセッション懸念が高まっている。その影響で日経平均も急落した。2008年は厳しい幕開けとなった。

 東京市場では、日本銀行は利下げに追い込まれるのでは、という観測がジワリと広まりつつある。が、0.5%という超低金利から利下げすることの景気刺激効果を疑問視する声が、今のところ日銀内で大勢を占めていると思われる。

 BRICsや石油産油国の需要が旺盛であれば、それらが米経済の減速をショックアブソーバーとして受け止めてくれるだろうという期待感も日銀内に残っている。もっとも、中国経済については、当局による景気過熱抑制策が過剰にならないか一抹の不安がある。上海の日系企業に勤める知人によれば、年明け以降も銀行の融資態度は厳しく、資金繰りは苦しい状態が続いているという。

 FRBやイングランド銀行は金融不安から短期金利が上昇してしまう「意図せざる金融引き締め」を相殺する必要に迫られた。12月FOMCの議事要旨には「金融政策のスタンスはいまやいくらか引き締め的になっているように見える」との記述がある(なお、FRBが12月下旬から開始した新しい資金供給オペであるTAFに関して、数人の幹部はモラルハザードを警戒していたことが明らかになった。資金繰りが容易になるからと思われる)。

 現在の日本では、欧米と異なり意図せざる金利上昇は生じていない。

 その点では、利下げを急がねばならぬ環境ではないといえる。また、日本のインフレ率の水準はいまだ低いものの、上昇傾向がしばらく続くだろう。当面は利上げも利下げもない状態を日銀は選択すると思われる。ただし、FRBが金融緩和を進めるなかで急激な円高ドル安となった場合、日銀が政治的に無策でいられるか、という点は懸念される。

 なお、FRBの12月FOMC議事要旨には、米経済の先行きの見通しに関するFRB幹部の自信のなさが各所に垣間見られた。「不確実性」という言葉が強調されている。12月FOMC時点では、労働市場は前向きな傾向を維持しているとの評価を複数のFRB幹部が行なっていたが、現在はそこに揺らぎが出つつあると思われる(雇用統計はぶれが大きいため、トレンドの見極めは難しいが)。

 先行きが読みにくいだけに、当面は利下げを続けながら、インフレなどに問題は出ないか経済指標をチェックしていくという「プラグマティックなアプローチ」(コーンFRB副議長)をFRBは続けていくしかないだろう。

(東短リサーチ取締役 加藤出)