株式レポート
8月27日 18時0分
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半沢直樹がヒットしている一つの理由 - 村上尚己「エコノミックレポート」

ドラマ「半沢直樹」が圧倒的な高い視聴率を記録しているが、大手銀行を舞台にした人気ドラマということで、金融業界に身を置く筆者も楽しませて頂いている。もちろん、テレビドラマだから、「そんなわけないだろ?」と銀行業界の経験がない筆者すら思わざるを得ない展開も多い。でも、ドラマとして楽しめる。銀行業界を巡る独特な人間模様や慣習について「大げさだけど、そうかもしれんなぁ」と思わせるように描写されていることが、多くの人を引き付ける要因の一つなのだろう。

筆者が興味深く感じているのは、バブル崩壊後の経済の落ち込みとデフレという環境で、銀行、企業、監督当局などの登場人物が、不良債権問題を舞台に演じているドラマがヒットしていることである。不良債権問題は2000年代半ばに峠を越え10年弱が経過しており、リーマンショック時にも大手銀行の破たん懸念が市場で高まることはなかった。不良債権を抱える銀行を舞台にした銀行マンの苦労の姿が、しばらく時間を経た今、注目されているのはなぜだろうか。

先週末(8月25日)放送の見せ場は、主人公の半沢直樹が、「(社内の出世などのためでなく)融資によって社会(企業)を支えるために銀行マンは働くべき」と力説する場面だろう。銀行マンが苦労してでも、やりがいを持って取り組めるのが、企業の事業を支える銀行融資に携わる仕事だろう。

ただ、1990年代後半から、経済環境の激変と縮小均衡化で、事業を支えるために銀行融資を増やす機会が圧倒的に減り、その反面後ろ向きな仕事が多くなった。経済のパイ(名目GDP)が増える普通の経済環境なら、企業に対する貸出(銀行融資)も自然に増える。しかし、バブル崩壊以降、デフレと資産価格下落に直面した、日本は全く逆の異常な経済状況に見舞われた。

そんな銀行マンそして事業に挑む企業経営者にとって、「過酷なデフレと経済停滞はいい加減にして欲しい」という多くの方の思いがドラマへの共感を呼び、人気の高めている一つの要因ではないだろうか。リスクをテイクする企業や起業家が尊ばれ、それを銀行融資で支える銀行マンの社会的な役割を果たせるようになる。そんな、ごく普通の正常な経済状況が訪れることへの希望である。

借金する事業家には強く逆風が吹き続け、融資が不良化するリスクが高まる。それがデフレ経済の本質である。2012年6月20日レポート「デフレの害悪」で、デフレが経済活動の停滞をもたらす「デットデフレーション」のメカニズムを説明した。リスクをとって事業を行う、企業家などへ負担が恒常的に高まり、経済活動のダイナミズムが失われ投資・消費が抑制される。そうした現場の最前線で、1990年代から苦闘していたのが、銀行マンや銀行融資に支えられ事業を営む企業である。

グラフでは、銀行融資と消費者物価上昇率の推移を示している。デフレが深刻化した1990年代半ばから、銀行融資の本格的な圧縮が始まった。不良債権問題が峠を越えた2000年代後半以降も、銀行融資があまり増えないのは、デフレから抜け出せず実質金利の高止まりが続き、資金需要を抑えつける状況が続いているためだ。


インフレ・デフレに責任を持つ中央銀行の金融政策の誤りがデフレの最大の原因であることは経済学のセオリーであり、米欧では幅広く受け入れられている。2013年になってそれまでの誤りを正し、まず金融緩和強化で脱デフレを目指した。そうした問題の核心を突いていたからアベノミクスは広く支持され、マーケットもそれに反応し、そして景気復調とともに脱デフレの機運も再び高まっている。

2014年以降も、脱デフレに注力する経済政策運営を、安倍政権は続けるかどうか?銀行マンの「本来の役割」にまい進する半沢直樹の仕事ぶりが尊ばれる、まともな経済環境が再び訪れるかは、それ次第である。




(チーフ・エコノミスト 村上尚己)

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(マネックス証券)


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