経営×ソーシャル
ソーシャルメディア進化論2016
【第38回】 2013年9月3日
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武田 隆 [クオン株式会社 代表取締役]

【大庭広巳氏×武田隆氏対談】(後編)
リアルの価値が見直される背景に
フェイスブックの“盛る”文化あり

フェイスブックは素敵な自分を演出する、いわゆる“盛る”コミュニケーションになる傾向がある。ちょっとカッコいい自分を演出するためには、「こんな人に会った」「あんな店に行った」という新たな刺激が必要になる。シェアオフィスやコワーキングスペースの拡大、TED、街コン、産直のマルシェなど、「つながり」を求めて新たな場が形成されていることは、ソーシャルメディアの浸透と決して無関係ではないのだ。
ソーシャルメディアが進化していくと、これからのオンライン、オフラインのコミュニケーションはどう進化していくのだろうか?

新たな刺激を求める人が増え、リアルの価値が再評価される

武田 ソーシャルメディアが進化して、これからのオンライン、そしてオフラインのコミュニケーションはどうなっていくと思われますか?

大庭広巳(おおば・ひろみ)
株式会社OBAS 代表取締役。
早稲田大学法学部卒業後、1982年にCIコンサルティング会社である(株)PAOS入社。ブリヂストンCI戦略、銀座松屋BI戦略「ギフト戦略」立案などに参加。1984年、株式会社リクルート入社。AB-ROAD事業部企画推進課長として、航空会社、政府観光局のプロモーション企画開発に従事。「じゃらん」創刊準備室リーダーを経て創刊後、同副編集長、1993年編集長に。1997年、電子メディア事業部編集長を務め、ISIZE戦略プランニングに関わる。1999年、「ISIZE」OPEN後、同編集長。2000年、リクルートとUS-ABOUT社とのジョイントベンチャーである(株)リクルートアバウトドットコムジャパン(現(株)オールアバウト)設立と同時に、取締役兼COOに就任。2004年、有限会社大庭広巳事務所を設立。2011年、株式会社OBASに社名変更、現在に至る。

大庭 インターネットの本質というのは、常時接続のつながるメディアだというところにあると思うんです。リアルタイムで相互発信しながら、共創していくというような……。

武田 コ・クリエーションですね(本連載第14回井庭崇氏との対談参照)。

大庭 はい。それは、インターネットが誕生した当初から感じていたんです。ツールや機能、サーバなどのインフラがそれに追いつかないからまだできていないけれど、いずれはその方向に向かうと思っていました。でも、実際にテクノロジーが進化して、ソーシャルメディアで常時つながるようになったら、ソーシャルメディア疲れというものを感じるようになった。

 フェイスブックなどはみんな実名ですから、ちょっとカッコいい自分を演出し続けて、どんな店に行ったとか、こんないい話があったとか、同じような情報がずっと繰り返されていく。蛸壺化が進んでいる感じがします。

武田 フェイスブックは、みんなに見せたい、見てほしい自分を演出する、いわゆる“盛る”コミュニケーションになる傾向があるようです。また、通常、オフラインの知り合いとつながっていくので、顔見知りのネットワークが形成されやすい。

大庭 ですよね。そうすると、知人のネットワークを離れて、やっぱり偶然の出会いを求め、今まで自分が知らなかった刺激をキャッチしたいと思うようになるんじゃないか?それは翻って、リアルな場に新たな価値を提供することになるんだと思うんです。最終的に「情報」というのは、コンテクストがつながり、ストーリー化してはじめて人の感情を動かすものです。インターネットでページごとに区切られたものを閲覧するより、武田さんとも直接こうやって話したほうが全身全霊でいろんな情報を伝えられるじゃないですか。

武田 そうですね。しかし、それをオフラインの場で体験するとなると、時間も空間も限られてしまいますよね。逆に、オンラインでは、それらの制約から解放されるので、情報や人物に出会える可能性の範囲を広げ、また、出会うまでの労力を抑えられるという利点もあります。

大庭 だからこそ、オンラインとオフラインはセットだと思いますね。ソーシャルメディアでつながったことによって、リアルな場が違う意味を持ってくる。オンラインで得た情報によって、リアルな場に赴き、そこで得た刺激をまた発信することで、新しい出会いが生まれる。こうして、オンラインとオフラインを行ったり来たりするのではないでしょうか。

 シェアオフィスやコワーキングスペースの拡大、TED、街コン、産直のマルシェなど「つながり」を求めて新たな場の形成は活発ですよね。

武田 隆(たけだ・たかし) [クオン株式会社 代表取締役]

日本大学芸術学部にてメディア美学者武邑光裕氏に師事。1996年、学生ベンチャーとして起業。クライアント企業各社との数年に及ぶ共同実験を経て、ソーシャルメディアをマーケティングに活用する「消費者コミュニティ」の理論と手法を開発。その理論の中核には「心あたたまる関係と経済効果の融合」がある。システムの完成に合わせ、2000年同研究所を株式会社化。その後、自らの足で2000社の企業を回る。花王、カゴメ、ベネッセなど業界トップの会社から評価を得て、累計300社のマーケティングを支援。ソーシャルメディア構築市場トップシェア (矢野経済研究所調べ)。2015年、ベルリン支局、大阪支局開設。著書『ソーシャルメディア進化論』は松岡正剛の日本最大級の書評サイト「千夜千冊」にも取り上げられ、第6刷のロングセラーに。JFN(FM)系列ラジオ番組「企業の遺伝子」の司会進行役を務める。1974年生まれ。海浜幕張出身。


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