「仕事」と「世の中」が
一本の線でつながっていることを感じる

井上 じつは、僕の知り合いで、大学を出たばかりの頃、マッキンゼーとWWF(世界自然保護基金)の両方からオファーをもらい、マッキンゼーを断った人がいます。当時はけっこう驚きでした。でも、こうしたことは、最近はとてもあちこちで起きていますね。

 僕自身が創設者として関わっている「ソーシャルベンチャー・パートナーズ(SVP)」という、社会起業向けの投資機関がありますが、数年前から、 そのSVPでグローバル金融機関のUBSとコラボレーションをしています。彼らがSVPに恊働のオファーをして下さった理由の1つに、金融危機後、金融機関が社会から求められている役割や責任が変化するなか、社会的課題により敏感に反応し解決に向けて動ける人材が必要だということがあったようです。

 しかも、外資系金融で働き多忙を極めるなかでも、NGO・NPOなどの非営利セクターを手伝い、世の中に貢献したいと言う人が出てきた。いったい、これは、何が起きているのか?ということで、それを機により本業のスキルを生かした社会貢献プログラムの必要性を見いだしたようなんです。

 企業にしてみれば、モチベーションを高めようと手を尽くしても自発性やリーダーシップはなかなか変化しなかったのが、社会課題の現場にかかわったとたん、生き生きしてくるのも驚きのようです。人間は「私」と「仕事」と「世の中」が一本の線でつながっていることを感じられると、心に火が付きやすくなる。自己効力感も高まります。内発的な動機も高まり、今に心をおく。体感もともない、より「マインドフル(Mindful)」な状態になるといっていい。

ソーシャル・イノベーションに関わると<br />なぜ、僕たちは元気になれるのか?<br />対談:井上英之×紺野登(中編)