株式レポート
8月28日 18時0分
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波乱の秋は絶好の仕込み場 - 広木隆「ストラテジーレポート」

結論: 押し目買い

僕のレポートは余計な話が長いので有名だが、時折せっかちな読者から、「こっちは忙しい時間をやりくりして読んでやってんだから、結論を早く書け」というお便りをいただく。僕は天邪鬼で性格がひねくれているから、そういうことを言われると余計に要らぬ話を書きたくなるが、たまにはリクエストにお応えして結論から述べることにする。

この秋は重要イベントが目白押しである。前回出演したテレビ東京モーニングサテライトでも、「この秋はジェットコースターみたいな相場になる」と話した。9月相場を前に、シリア情勢の緊迫化を受けて株式市場は早くも波乱の展開となっている。結論は、「下がったところは買い」である。この先に控える、いくつものリスク・イベントが警戒され相場が崩れる局面が何回も訪れるだろう。そうした局面で、下値を丹念に拾っていきたい。コンプライアンス上、「絶対」だとか「必ず」だとかの言葉は使っちゃいけないので使わないが、「かなりの確信度をもって」そうした投資は報われるはずである、と申し上げる。

理由: 業績の上方修正が起こるから

「7月、8月と日経平均の予想を外しておいて何を言うか」とお怒りのかたもおられよう。なぜ僕の予想が外れたのか、そこにこそ、この先の押し目買いがかなりの確度で成功する理由がある。僕は好業績が見込まれた第1四半期の決算発表を受けて、業績の上方修正が起こるだろうと予想した。実際に業績は好調だったものの、企業は慎重姿勢を崩さず、保守的な通期予想を変更しないところが大半だった。だから日経予想の(すなわち会社予想ベースの)日経平均の今期EPS(1株当たり利益)は900円に据え置かれたまま。900円×PER15倍=1万3,500円というのが日経平均の「指定席」となってしまった背景はここにある。

では読者に質問です。この先、上場企業の業績の上方修正は起こらないと思いますか?そんなことはないでしょう。さすがに上方修正してくると思う。おそらく、4-9月期の決算発表では通期見通しを変えてくるだろう。第1四半期では、さすがに早いとしても、年度の半分が終わって相当程度、業績が上ぶれていれば、そのタイミングで通期予想を変えないほうがおかしい。

実際に、先日、日経新聞は業績の上ぶれ観測記事を掲載した。
<円安が企業収益を一段と押し上げそうだ。足元の実勢に近い1ドル=98円、1ユーロ=130円が続くと、主要輸出企業30社の2014年3月期(一部は13年12月期)の連結営業利益は、計6300億円程度上振れする見通しだ。利益合計額の1割近くにあたる。多くの企業が業績予想の前提となる想定レートを保守的にみているためだ。>(日本経済新聞朝刊 8月24日)

ざっくり言って、1割上方修正なら日経平均のEPSは990円。PER15倍で1万4,800円である。これが、4-9月期の決算発表を通過すれば見えてくるだろう。百歩譲って、4-9月期もまた上方修正が見送られたとしよう。その場合は、4-12月期決算発表に上ぶれ期待が持ち越される。4-12月期となれば年度の4分の3が終わっているわけだから、なんぼなんでも通期予想を変えてくる。上ぶれの確実性が格段に高まるので、市場はそこまで待たないだろう。よって相場は年末高というシナリオである。

まとめると、秋の波乱相場で売られたとしても、業績の上ぶれがかなりの確度で見込まれる以上、下値は限られる。早ければ中間期、遅くとも年明け4-12月期決算発表での上方修正期待で日本株は買われるだろう。下げたところは積極的に拾うべきだと考える。

相場は難しい。しかし、その難しい相場のなかで、この局面は珍しく非常に簡単で、滅多にないチャンスである。これほど確信度に満ちた、分かりやすいシナリオもないだろう。

こうしたことが言えるようになったのも、「失われた20年」のおかげだ。著書『9割の負け組から脱出する投資の思考法』でも述べたことだが、日本株は20年という長い時間をかけてバリュエーションの調整をした。その結果、現在の株価はフェアバリューにある。割安ではないが、割高でもない。国際水準に照らしても、そう判断してよい。著書ではこう述べた。

<フェアバリューにあるということは、自動車のハンドルに喩えるならば「あそび」がまったくない状態だ。左に切れば左に、右に切れば右に、ヴィヴィッドに(的確に、クリアーに)反応する。業績を素直に反映する相場になったのだ。そして今期の企業業績は大幅な改善が見込まれている。日本株は、その業績の改善に応じた上昇基調を辿るだろう>
セオリー

米国がシリアに軍事介入するとの観測が高まっている。当然のように、市場ではリスク回避姿勢が強まり、株は売られ、安全資産である米国債と金に資金が逃避、為替市場では安全通貨である円とスイスフランが選好されている。中東情勢緊迫化とあって原油も一段高だ。この流れ、一見するとセオリー通りの展開である。

「セオリー」(Theory)というのは直訳すれば「理論、理屈」という意味だが、ゲームにおいては「定石」「常套手段」という意味で使われる。例えば、野球ではランナー1塁のとき、送りバントは1塁方向に転がすのがセオリーだ。無論、それには「理屈」があるからだが、選手がプレーするときには、いちいちそんな「理屈」は考えない。むしろ、考えずとも行動できるように頭と体に刷り込むものが「セオリー」である。走塁の基本として、「ライナー・バック(戻る)、ゴロ・ゴー(進む)」というセオリーがあるが、バッターが打った瞬間に打球を見て判断しなくてならないのだから、これはもう考えている余裕などない。反射神経の問題である。

今回のシリアを巡る市場の動きも、頭で考えずに条件反射的なところがある。例えば、「リスク回避の円高」。一時、さんざんそう言われたが、なぜリスク回避姿勢が強まると円が買われるのか、整然とした理屈はない。ゼロ金利の円を調達して行っていたキャリートレードの巻き戻し - というストーリーは、いまやほとんどの国がゼロ金利みたいなものだから、どの通貨を調達するのもコストはたいしてかからない。円キャリーなどは死語だろう。「円は安全通貨だから」 - とも言われるが、いったい日本のどこが「安全」なのか?

あえて理由をこじつければ、スイス同様、日本は純債権国だ、という点であろう。純債権国の通貨は安全 - そういう理屈なら極めてよく分かる。であるならば、一方で、日本の財政健全化の急進派がよく持ち出してくる「国の借金1000兆円」「日本の財政は破綻寸前」「財政悪化で国債大暴落」という戯言は金輪際、やめてもらいたい。1000兆円の負債は「国の借金」ではなく、「政府」の借金である。日本という「国」全体では借金どころか、潤沢な対外資産を保有する純債権国だ。

財務省発表の平成24年末の対外資産負債残高によると、日本の企業や政府、個人投資家が海外に持つ資産から負債を差し引いた対外純資産は前年末比12%近く増加し296兆3150億円と過去最大となった。国際通貨基金(IMF)などの統計によると、2位の中国が約150兆円、3位のドイツが121兆円の純資産。日本の純資産は約300兆円だから2位の中国に倍の差をつける断トツの1位。しかも22年連続で「世界一の債権国」の座を維持しているのだ。なるほど、これではいかにも円が安全に映るのも不思議ではない。不思議なのは、日本のこうした健全性を評価する声が小さく、「国の借金1000兆円」ばかりが喧伝されることである。

つまり、この観点から「円の安全性」が広く認識されて、円買いに結びついているわけではないということだ。為替相場の材料で、金利差だとか経常収支だとかは議論されても、対外純資産額などが取沙汰されるのを見た覚えがない。

なぜ円高になっているのか?ひとことで言えば、「セオリー」を信じて条件反射的に取引をする主体がいるからだ。ゴロだったら無意識にスタートを切るのだと教え込まれている野球少年のように。

いずれ本来の「セオリー」、すなわち「理論、理屈」に戻るだろう。それは金融政策の方向性である。市場の「恐怖」の根底に米国の量的緩和縮小、いわゆるテーパリングの開始があるとすれば、それは常々言うように本来、ドル買い要因である。市場のコンセンサスをテーパリングの有無で ― 時期については9月か年内かは問わず、単純に有無で - 分ければ、おそらく9割方の市場参加者が、テーパリングが遠くない将来に開始されると予想しているだろう。その見方が正しいなら、ドルの供給は絞られるのだ。つまりドル高要因である。市場の大部分がドル高要因(=テーパリング開始)を予想しているにもかかわらず、短期的な為替の方向感は逆に円高に振れている。だから、この動きは長くは続かず早晩、修正されると思われる。相場は美人投票=多数決で決まる。みんながドル高要因をこの先に見ていれば、それに従わざるを得ないだろう。みんなが「リスク回避の円高」を盲信していて、その通りになっているのだから。
シリア情勢

安全資産の米国債が買われるというのも、セオリー通りだが、よく考えると間尺に合わないところが出てくる。例えば、こうした市場関係者の見方が紹介されている。

<軍事介入は米国の財政負担を直撃することになる。連邦政府の債務は10月半ばに上限を超える見通しとも報じられており、軍事介入と併せて米国の財政への不安に対しても市場は警戒感を強めるだろう>

この見方が正しいとするなら、財政が悪化する国の国債など、とても買えないではないか。

ここで思い出されるのが2年前、米国議会の茶番劇で、連邦債務の上限引き上げ問題が期限ぎりぎりまでこじれて、S&Pが長期格付けを引き下げ、初めて米国債がトリプルAを失うという事態となったことである。格付け会社が米国の財政問題に疑問符を突きつけたのだが、逆にその「問題あり」とされた債券が買い進まれる結果となったのだ。

今回も同様の思惑が背景にある。誰も連邦債務の問題を深刻には捉えていないのだろう。それがリスクだ、リスクだ、と表面上騒ぎたてても、本音では誰もリスクだとは思っていないのだろう。

もうひとつは、「軍事介入は米国の財政負担を直撃することになる」ということについても、本気でそう思っているひとはいないだろう。なぜなら、米国はこれから資金を調達してミサイルを作ったり、空母を建造したり、兵士を募集したりするものではないのだから。現在、保有する既存の軍事力を使うだけだ。戦費など嵩まない。

今回のシリアへの軍事介入は、長期化するとは誰ひとりとして思っていないだろう。短期的なデモンストレーションで終わる公算が高い。

マーケットの本質的な行動パターンは、「噂で買って事実で売る」というものだ。1990年8月にイラクがクエートに侵攻すると一気に中東情勢が緊迫化し、株は売られ、原油は高騰、有事の金買いで金相場も上昇した。ところが翌91年1月17日、多国籍軍によるイラク空爆が開始されると、その「リスク・ポジション」は一気にアンワインドされた。すなわち、NYダウや日経平均など株価が急騰した一方で、それまで積み上がったロングポジションが一気に解消されて原油と金は暴落したのであった。典型的な「材料出尽くし」として語り継がれる市場の動きだ。ぜひ参考にしてほしい。












(チーフ・ストラテジスト 広木 隆)

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