廉価版3Dスキャナーの登場

 世界的に3Dプリンターがブームになって2年くらいが経ち、それがこれまで一部の大企業に独占されていたものづくりのプロセスを一般市民にまで解放し、製造業に革命をもたらすと言われてきました。

 しかし、実際には3Dプリンターだけではものづくりの革新は困難です。その理由は、三次元の設計データがないと肝心のものづくりを行なえず、そのためにはCADソフトなどを使いこなして3Dでの設計を行なえるという専門知識が必要だったからです。

 そうした専門知識を持たない素人が3Dプリンターでものづくりを行なおうと思ったら、Thingiverseなど様々なモノの三次元の設計データが公開されているサイトから、データをダウンロードしてプリントアウトするくらいが関の山でした。

 この設計プロセスでのボトルネックをクリアする1つのアプローチは、素人でも簡単に使えるレベルの3D設計ツール(ソフトウェアなど)が普及すること。そして、もう1つのアプローチは、既存のモノから三次元設計データを複製することです。そして、後者のアプローチを実現する3Dスキャナーがついに登場しました。廉価な3Dプリンターの“Replicator”で有名な米国企業MakerBotが、“Digitizer”という3Dスキャナーを10月中旬から出荷することを発表したのです。

製造業の壊滅だけに留まらない?<br />3Dスキャナーの恐るべきインパクト米国企業MakerBotが10月中旬出荷予定の“Digitizer”
Photo by Spencer Higgins

 写真をご覧いただければ分かるように、レコードプレイヤーの円盤のようなものの上にモノを置けば、それが回転して、2つのレーザーと1つのカメラで三次元の設計データを作成できるのです。価格は1400ドルと、“Replicator”と同様に個人レベルでも手が届く値段となっています。

 もちろん、“Digitizer”は廉価版の製品ですので、表面に光沢があったり光を反射するモノのスキャンはうまく行かない場合もあるようです。それでも、これまでに市販されている安い3DスキャナーはNextEngineの製品で2995ドルであったことを考えると、格段に安くなったと言うことができます。

 ちなみに、ネット上ではクラウドファンディングを使って3Dスキャナーを生産する取り組みも増えています。Fuel3Dという企業はハンドヘルド型3Dスキャナーを1000ドル以下で発売しようとしており、またMatterformという企業は599ドルの3Dスキャナーの発売に向け、9月から予約を受け付けるようですので、3Dプリンターと同様に3Dスキャナーの価格も今後急速に低下するのかもしれません。