電力システム改革へ向けて、制度設計ワーキンググループが開催される等、本格的な議論がスタートしている。発送電分離とそのために必要な制度設計が議論の中心となるが、それを実現するためにはどのような課題があるのだろうか。また、現状描かれている新たな電力市場に変わると、産業界や一般消費社はどのような影響をうけるのだろうか。経済産業省「電気料金審査専門委員会」委員長も務めた安念潤司・中央大学法科大学院教授に聞いた。(聞き手/ダイヤモンド・オンライン編集部 片田江康男)

絵を描く事は誰でもできる
実際に実行できるかが問題

――先の参議院議員選挙で自民党が大勝し、自民党政権が盤石になった事で、電気事業法の改正が確実視され、本格的な電力システム改革が進むと見られています。8月からは制度設計ワーキンググループもスタートしました。どのように見ていますか。改革は正しい方向に向かって進んでいるのでしょうか。

東電と原発問題のメドをつけない限り<br />電力システム改革は机上の空論で終わる<br />――安念潤司・中央大学法科大学院教授インタビューあんねん・じゅんじ
1979年3月、東京大学法学部卒業、北海道大学法学部助教授、成蹊大学法学部教授を経て、2007年から中央大学法科大学院教授。経済産業省「電気料金審査専門委員会」委員長を務めた。

 私は自由主義者でどんなものでも政府の介入は少ない方がいいと思っている。今の電力システム改革は、方向としては正しいと思っているが、ただ、実際に本格的に導入するのは、今のままでは無理だ。解決とまでは行かないにせよ、解決のメドは付けなければならない、とてつもなく巨大な問題がいくつもあるからだ。

 机上の議論で、電力システムをこうしよう、ああしようというのは誰にでもできる。電力システム改革とは、現状の電力市場を自由化させるということで、これは発送電を分離し、電力小売への参入を自由化することだ。そういう市場の絵を描くことなら、誰にでもできる。

 問題というのは日本特有のもので、あまりにも大きく、気が遠くなるようなものだ。欧州の電力自由化の先進国の事例にはない、まったく次元の違う問題が日本の場合は存在するということだ。